1人と仲間の物語

[1] 眠兎

―――プロローグ

深夜、ホーホーの鳴き声しか聞こえないそんな時間。
普通の人であれば寝ているであろう時間。
しかし奴らは起きて活動をしていた。

「…やっぱり、明日新入りトレーナーに配る用のポケモンがいっぱいいるわね」
1人の女がある建物の中を覗き込み、そう相方へ話しかけた。
「どうする、実行するか」
もう1人の男がそう問いかけると女が静かに首を振った。
そして黙って使っていた双眼鏡を渡し、覗いてみろというようなジェスチャーをした。
それを見た男は位置を交代し、双眼鏡を使って覗いた。

「…なるほどな」
男がそう呟くと2人はそのまま暗闇のなかに消えていった。

書き込み時刻2013-02-27 16:22:30

[2] 眠兎

朝、しかも早朝、そんな時間から彼は起きていた。

「…これでよしっ」
何度も何度も手提げの中身を確認し満足すると、1階の家族がいるリビングへと向かった。

リビングには既に父と母の姿があった。
「母さん、父さん、おはよ」
入り口付近に立つとそう二人に声をかけた。

「おはよう、ライ。さすがに今日は早いわね」
母が食卓の準備をしながら顔だけをライに向けて言った。
「特別な日だからな、今日は」
父は読んでいる新聞から目を離さずにそう呟いた。

ライは小さくそうだね、と呟くと母の用意した朝御飯を食べ始めた。
母はそんなライの様子を見つめていた。

数分後、ライは食べ終えた。
「じゃあ…行ってくるよ」
何度も確認した手提げを提げてライは家を出ようとした。
「いってらっしゃい」
母はそう言ってライを見送ろうとする。
父は動かない。

「…父さんも、母さんも、仲良くね」
ライがそう言ってドアに手をかけると父がやってきて
「体に、気を付けろよ。いつでも帰ってきていいからな」
と言ってまた部屋の中へ戻っていった。

ライはふっと笑みをこぼすと、母に、そして姿は見えないが父にも見送られ家をあとにした。

書き込み時刻2013-02-27 16:43:04

[3] 眠兎

第一章 【出会いと別れ】

その日は新しくポケモントレーナーになる子供たちに、初心者用のポケモンを配る日だった。
ウミシロタウンにあるポケモン研究所にはトレーナーになりたい子供が殺到していた。
ライもその中の一人だ。

しかしなぜか研究所の扉は開いておらず、全員不安そうな顔で研究所を見つめていた。
しばらくして扉が開いたかと思うと、パジャマ姿の少女が欠伸をしながら外へ出てきた。

「…」
少女は子供の人数を見ると目を丸くし、そして
「あ!今日ポケモンあげる日だ!忘れてた!」
と叫ぶと全速力で研究所の中へ戻っていった。

そして数分後、白衣姿に着替えた少女が再び現れた。
少女は子供たちを一望すると咳払いをし
「えー、トレーナー希望の皆さんようこそウミシロ研究所へ。私はここの博士を勤めているミウルです。これからよろしくね!」
と言ってブイサインをした。

しばらくの沈黙のあと、ほぼ全員から驚きの声があがった。
どう見たって8歳ぐらいにしか見えないので、当然とも言えよう。
しかし、彼女は正真正銘博士であった。

このことはウミシロタウンに住んでいる人間は知っていたので、ライは驚きはしなかった。
そしてライは驚いている子供の横をすり抜けてミウルへと近付き挨拶をした。
ミウルはブイサインでかえしてきた。

「驚くのはあとにして、さっさと研究所の中へおいでー。あげるポケモンたちを紹介するよ!」
ミウルはそう言うと扉を全開にし、中へ入っていった。
そのあとにぞろぞろと続いていく。

どんなポケモンが待っているのか、みんな期待に胸を膨らましていた。

書き込み時刻2013-02-27 23:49:15

[4] 眠兎

中は広々としていた。
中央にモンスターボールが3つ置かれた台が置いてあり、ミウルはその横に立っていた。

ミウルは全員が入ってきたのを確認すると
「はーいじゃあ私を囲んで円になってー!見えない人がいないようにしてねー!」
と叫びながら手をパンパン叩いた。

みんなその指示にしたがい、円になった。

「んじゃ、ポケモン紹介始めるよー。一匹目は…この子!」
ミウルはそう言うと置かれているモンスターボールのうちの1つを手に取り、投げた。
そのモンスターボールから、一匹のポケモンが放たれた。

「ポカー!」
出てきたポケモンはそう鳴くと、辺りに火の粉を撒き散らした。

「炎タイプのポカブ!水に弱くて草に強いよ!」
ミウルはそう言うとポカブをモンスターボールの中に戻した。
「次はこの子!」
そして残りの2つのうち1つを放り投げた。

出てきたのは緑色のポケモンだった。

「タージャっ」
ポケモンはそう鳴くと、つるのむちを床へ繰り出した。
「草タイプのツタージャ!水に強くて炎に弱いよ!」
ミウルはそう言い、ツタージャを戻した。

「最後はこの子!」
そう言ってミウルが投げたモンスターボールから出てきたのは、水色のポケモンだった。

「ミジュ!」
ポケモンはそう鳴き、お腹についている貝殻を手に取り振り回した。
「水タイプのミジュマル!炎に強くて草に弱いよ!」
ミウルはそう言って最後のポケモンを戻した。

「さて、この三匹のなかから一体を選んでもらいます!決まった人から私のとこに来てね!パートナーは一生ものだし、数はたくさんいるか安心してら大いに悩んでね!」
ミウルがそう言うと、静かだった空気がざわついてきた。

ライは最初から決めていたので迷わずミウルに近付き
「ポカブ、ください」
と言った。

「…それで、いいんだね?」
ミウルが最後の確認をするとライは力強く頷いた。
ミウルはそれを見るとモンスターボールがたくさん入っているケースを持ってきてそのなかから1つ取り
「ポカブを大事に育ててあげてね」
と言ってライに手渡した。

ライは受けとるとあいてる場所に行き早速ポカブを出した。
「よろしくな」
そう言ってポカブを撫でると、ポカブはそれに応えるかのように火の粉を吐いた。

しばらくし、全員が選び終わるとミウルは再び咳払いをし
「さてみんなも知っての通り、このヤマモリ地方にはポケモンジムは一つもありません。なので、これからみなさんには船にのってイッシュ地方へと向かってもらって、そこでポケモンマスターを目指して旅をしてもらいます。船は研究所の裏にあるから、用意をして早くのってね!」
ミウルはそう言うと研究所の奥へと引っ込んだ。

ライはポカブをモンスターボールへ戻し、船に乗り込んだ。

数分後、船は新しいポケモントレーナーたちを乗せて出航した。

書き込み時刻2013-02-28 00:12:02

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