[1] T.T.
どうも、T.T.です。ガーディ巡査の方は話が行き詰まってしまったので、新しくポケダンの小説を書きたいと思います。拙い文章ですが、よろしくお願いしますm(--)m
では早速↓
『ロマン(ハリマロン)』♂
本作の主人公で、ニンゲンの男の子だった。絵本に出てくる架空の生き物であるポケモンに憧れており、いつか向こうの世界で自由な冒険をしたいと思っていた。ある朝、目が覚めると、ポケモンだけが暮らす絵本のような世界にいることに気付き、自身もまたポケモン・ハリマロンの姿となっていた。頼りない一面もあるが、いざとなったら強気になる、純粋で優しい性格である。一人称は「僕」
『ケロマツ』♂
本作のパートナーで、ロマンとは同じくらいの年齢の男の子。呑気でボーッとしていることも多いが、戦いのときは驚くほどの瞬発力を見せる。読書が好きで年齢にしては豊富な知識量を持つが、いじめっ子から「ガリ勉」とからかわれることもしばしば。それ故、探検隊を組みたくても仲間に恵まれないのが悩み。後にロマンと探検隊『トレジャー』を結成する。一人称は「オイラ」
◎プロローグ
森閑を極めたある闇夜のこと。少年の住む家屋は幽けき光を放っていた。
少年「(ポケモンってかっこいいなぁ〜! 僕の知っている生き物が、みんなヒーローのようだ!)」
寝床で少年が目を輝かせる傍、次次と頁がめくられていく画集は、他ならぬ「絵本」である。表紙やその内側に色彩豊かに描かれた、摩訶不思議な架空の生き物たち。巷では「ポケモン」と呼ばれている。
少年「(いつか僕も、ポケモンの世界に行ってみたいなぁ…!)」
母「ロマ〜ン! 早く寝なさ〜い!」
ロマン「は〜い!」
階下の催促を小耳に挟んだ少年・ロマンはデスクの引き出しに絵本を納めるや否や、消灯し、枕した。デスクカバーに身を包んだ期末テストの範囲表への一瞥が、少年を憂わしげにさせたのだ。
ロマン「(はぁ〜…。でも実際は、いつも通りの朝がやって来る。今日と何も変わらない、いつも通りの…)」
意識が夢路に消えた。この時少年は、翌朝に絵本の世界へ導かれることなど、知る由もなかった。
2014-08-13 21:41:46
[8] T.T.
ロマン「! そういえば、何だろう……『これ』…」
まだハリマロンの厚く頑丈な手の感覚に慣れていないため、ケロマツから指摘されるまで気付かなかったのだ。
ロマンが左手に『真っ白で何も書かれていない本』を握りながら、小道を歩き続けているということを。
ケロマツ「自分の持ち物なのに気付かなかった…? とにかく、めくってみなよ」
ロマン「う、うん」
ペラペラペラペラ…
何十枚もの『白紙』で構成された冊子はそれなりの重量があり、すべてを見渡すまでには時間を要した。が、依然としてページは何も語らない。
ケロマツ「んー、今日は不思議なことばかりだなあ」
ロマン「…?」
謎の『真っ白で何も書かれていない本』の存在に圧倒に圧倒され、言葉を失うロマン。
ケロマツ「おいら、人間なんて初めて見たよ。『真っ白で何も書かれていない本』っていうのもなおさら…」
ロマン「やっぱり、この辺りにはポケモンしかいないの?」
ケロマツ「常識ではね。人間は飽くまでも伝説上の生き物。その存在については、誰もわからないさ。」
ロマン「そんな…?」
ケロマツ「でも今おいらの目の前に、自分は人間だって言い切るポケモンがいるんだ! 常識を覆す存在! 何て浪漫に溢れてるんだ!」
ロマン「浪漫か〜!」
本来この世界ではありえない人間の存在が、ケロマツに一種の感動を与えた。
ケロマツ「ところでロマン、これからどうするつもり?」
ロマン「うーん……この辺りを散歩すること、だけかな」
ケロマツ「だったらさ、ちょっと手伝ってほしいことがあるんだけど、いい?」
先程ケロマツに助けられた(?)恩は、ロマンにYESと答えることを強制させた。
ケロマツ「おいら、おつかいを頼まれているんだ………‘‘ガマゲロ
ゲさん”と‘‘Dr.オーベム”からね」
ロマン「がまげろげ、おーべむ………??」
2015-01-29 00:10:08
[9] イーブイフレンズ
お久しぶりです!!
さすがですね…
僕の小説なんかとは比べ物になりません…
これからも頑張ってください!
応援してます!!
2015-01-30 20:04:26
[10] T.T.
イーブイフレンズさん、コメントありがとうございます! 気まぐれ更新ですが、頑張りたいと思います(笑)
では、続きいきましょう。今回の内容はちょっと重いかもしれません。
おつかいの内容は、このダンジョン‘青緑の小道’の奥地に群生している‘かおるキノコ’をできるだけたくさん採ってくるというもの。至って簡単である。
ケロマツ「その2匹はこの辺りで『ゲロゲ文庫』っていう図書館を経営してるんだ。ガマゲロゲさんはそこの館長兼執筆家。Dr.オーベムは地下室で怪しい実験を続ける科学者さ」
Dr.オーベムの実験結果をガマゲロゲが本にまとめるというのが、蔵書数500万冊を超える図書館『ゲロゲ文庫』のスタイルだという。執筆家と科学者、扱う分野こそ違えど、両者ともかなりの腕前である。
ロマン「500万冊もの本…! 想像もつかないよ」
ケロマツ「ははは。ま、本のエキスパート・ガマゲロゲさんにかかれば、ロマンの持つ『真っ白で何も書かれていない本』の正体がわかるかもしれな…」
ロマン「ところで、なんで図書館からキノコのおつかいを?」
ケロマツ「!」
不意に、ケロマツの足が止まった。
ロマン「ケロマツとガマゲロゲさんたちは…どんな関係なの?」
ロマンの素朴な疑問が、ケロマツに一瞬の躊躇と途方も無い哀惜をもたらした。
ケロマツ「(天涯孤独のロマンにだったら…話してもいいよね……)」
ロマン「………?」
ケロマツ「おいら、幼い頃………親に殺されかけたんだ…!!」
ロマン「ええっ!!?」
ケロマツ「終いには………暗〜い、暗〜い洞窟の奥底に捨てられた……。怖くて、寂しかった…………」
ロマン「い、一体どういう理由で!?」
ヒュ ォ ォ オ …
また、北北西からの冷たい風が、今度は徐に吹き込んだ。
それに呼応するかのように、ゆっくりと首を横に振るケロマツ。必死に涙をこらえている様子だった。
ケロマツ「……………そんな7年前のある日、おいらは洞窟であるポケモンに出会った……」
ロマン「……(ゴクリ)」
ケロマツ「名はガマゲロゲ。憎きおいらの実親を、太くしたようなポケモンだった…」
2015-01-31 10:46:18
[11] T.T.
ケロマツ「そのポケモンはおいらの人生を変えてくれた。傷だらけのおいらを抱き抱え、付きっきりで看病してくれた。そして遂には…行き先のない哀れな子を、親代わりになって養うことを決心したんだ」
ロマン「じゃあケロマツはその…'ゲロゲ文庫`で育ったっていうこと?」
ケロマツ「うん。そこでおいらは生まれて初めて『優しさ』を感じた…。ガマゲロゲさんは文字が読めなかったおいらに、探検隊の話をしてくれたんだ」
ロマン「探検隊…?」
古代の財宝の追求、未開の地の開拓などを目的とした少人数のチーム。それが探検隊である。ケロマツが住むゲロゲ文庫一帯のエリアでは、ポケモンたちは皆、探検隊を結成し活動するのが慣例的であるという。
ケロマツ「ガマゲロゲさんとDr.オーベムも若い時は探検隊を組んでいてね、彼らの話はいつもドキドキとワクワクでいっぱいだった!
閉ざされた雪山での冒険、見たことのないポケモンとの戦い…! おいら、言葉にならないくらい感激したよ!」
ロマン「へ〜! もっと聞かせてよ!」
ケロマツ「うん! おいらもいつかガマゲロゲさんみたいに、探検隊を組んで、見つけたものについて本を書きたいと思ってるんだーーーーーー」
血縁者にして宿敵の父親と、非血縁者にして恩人のガマゲロゲ。それぞれについて語る時のケロマツの表情は、まるで別人のようだった。
ロマンは青緑の小道を北へ進みつつ、日が暮れるまでケロマツの話に耳を傾けていた。枕元に絵本を置いていた少年は、隣にいる者に関して、どことなく類似的なものを感じたからである。
ようやく、ダンジョンの奥地へ辿り着いた。
ロマン「わ〜! いい匂い!」
ケロマツ「あれが'かおるキノコ`で間違いなさそう。ん〜、実験用に使われるには勿体無いくらいだね!」
小道の果てに、黄色いキノコが可憐に群れをなしているのを見た。花畑ならぬキノコ畑といったところであろうか。かおるキノコの独特の甘い香りは、2匹の鼻腔を刺激した。
ロマン「よし、早速採って…」
???1「あれれー? そこにいるのはガリ勉のケロマツ君じゃないのー?」
???2「ぼっちのくせに、珍しく連れがいるみたいよ?」
ケロマツ「!! (その声は…!)」
ガサガサッ
ロマンたちが意気揚々とキノコ狩りに乗り出そうとしたとき、近くの茂みから2匹のポケモンが現れた。
ケロマツ「ヤンチャム、クマシュン! お前たちが何故ここに……!?」
ヤンチャム「へへっ。テメェの物は、オレっちの物。オレっちの物も、オレっちの物っつーことだァ!!」
クマシュン「そのキノコ、チーム『ベアーズ』がいただいたわ!」
2015-03-17 23:15:59
[12] 蒼葉
T.T.さん、はじめまして!
蒼葉と申します。
文章力が素晴らしいです!
更新待ってます!
2015-03-18 08:55:17
[13] T.T.
蒼葉さん、初めまして。コメントありがとうございます! 私、以前はガーディ巡査という小説を書いており、最終章あたりで断念してしまいましたが……今回は完結できるよう頑張りたいと思います!
更新します。スレを立ててから半年以上が経つというのに、まだ1話も終わっていないとは…
無茶苦茶な理論を展開し、かおるキノコの独占を図るヤンチャム・クマシュン。
ケロマツのか細い脚部は、自ずと震慄していた。
ロマン「ケロマツの知り合いなの?」
ケロマツ「いや、ただのいじめっ子さ。探検隊ベアーズ、素行の悪さであまりいい噂は聞かないけどね」
ヤンチャム「おいおい。そんな言い方はねえだろう…」
ロマン・ケロマツ「!」
ヤンチャム「がっ!!!」
ブン!
刹那、ヤンチャムの拳が拳銃の如く襲いかかるも、見切られてしまう。
ロマン「(あわわ…どうしよう……)」
気にくわぬ者を問答無用で殴りかかろうとするというガキ大将的風格は、ロマンに、咄嗟に近くの木陰に隠れることを強制した。
ケロマツ「ヤンチャム…! 君はもっと、カルシウムを摂取するべきだ!」
クマシュン「はァ???」
ヤンチャム「ハハーハハハハ!! カルシウムがなんだってェ!!? これだからガリ勉は困るぜ!!」
高笑いしながら、ロマンが身を潜めている木の方へ歩み寄るヤンチャム。ロマンは、この粗野なポケモンの目を盗むことに失敗したのだ。
ヤンチャム「おい、イガグリ坊主。お前もわかっただろう。ケロマツはな…友情よりも勉強を優先するクズ野郎さ」
ロマン「………!」
ヤンチャム「だ・か・ら・よ。悪いことは言わねえ。あんなガリ勉とダチになるのなんかやめて…オレっちたちと来ねえか?」
ロマン「か、勝手なことを言うな!
ケロマツは勉強熱心なだけだよ!」
ヤンチャム「…殺すぞ?」
ロマンは一瞬、言葉を忘却した。言葉などでは言い表せないほどの恐怖て狼狽が、滝の如く流れ込んだからである。
ケロマツ「…!! おいらの悪口を言うのは勝手だけど…! ロマンに手を出すn」
ヤンチャム「はい空手チョップー」
バ キ ッ !!
ロマン「ケ、ケロマツ!?」
クマシュン「きゃー! やっちゃえやっちゃえヤンチャム君ー❤︎」
ヤンチャムの残酷な手刀が、突進するケロマツの足を切り裂いた。
ヤンチャム「今だクマちゃん! よろしく頼んだぜ!」
クマシュン「ok! 冷凍ビーム!」
キ ィ ィィ ィ ……… ン
立ち所にして、空中に弧を描くように冷凍ビームを発射するクマシュン。身体を回転させながら冷気を放つことで、出来上がった氷塊は渦を巻き、囲いのようなものをなしていく。やがて高度が増した囲いはヤンチャム、クマシュン、そしてケロマツの3匹がいる位置のちょうど真上で重なり、端麗なドームを造形した。氷のかまくらの完成である。
ロマン「…? (何をする気だろう…?)」
何とも幻想的なかまくらの外側に独り取り残されたロマンは、その美麗さに見入ることを余儀なくされた。
ケロマツ「ぅぅっ……」
ヤンチャム「さァーてケロマツゥ、邪魔者はいなくなった!! この氷が溶けるまで…! ギッタンギッタンにしてやんよォ!!!」
2015-03-18 18:47:09
[14] T.T.
バキィッ!! バキィッ!! ドゴォ!!!
いじめっ子による痛打の音と、い
じめられっ子による慟哭の音とを咆哮し続ける氷のかまくら。中で勃発した極めて凄惨な行為とは対称的に、氷のかまくらは心が奪われるほど美々しかった。
ロマン「………(ケロマツ…!)」
ケロマツが虐げられるのが堪えきれなかったロマンは、イガグリ頭の上に『真っ白で何も書かれていない本』を被せたまま、死人の如く木陰で息を潜めていた。ケロマツの無事を衷心より祈る他、仕方ががなかったのだ。
バキィッ!! バキィッ!! ドゴォ!!!
どれくらい時間が経っただろうか。黄昏時の空に、一番星が顔を出し始めた頃である。
ケロマツ「ハァ………ハァ………………」
ロマン「ケ、ケロマツー!!!」
氷のかまくらが一斉に溶け出し、瀕死のケロマツの姿が露わになったのだ。無意識のうちに駆けつけ、倒れかけた重体のポケモンを支えるロマン。かおるキノコも探検隊ベアーズも跡形も無く消え去っていたのがわかった。
ケロマツ「本当に………悪いね………ロマン…。迷惑………かけちゃって……」
ロマン「なんてひどいことを…!! 無理しないでね、ケロマツ!」
ケロマツ「おいらは………大丈夫……ハァ……。あと……1時間……ここで…安静に…………してれば……………歩けるように……なる…だろうから…………」
ロマン「ホント!?」
静寂に包まれた小道には、ただケロマツの、締め付けられたような吐息だけが響いていた。
不意にロマンは、ケロマツが携帯していたキノコ図鑑がなくなっているのに気付いた。
ケロマツ「………ボコボコに…………される……のも………………………本を……奪われる……のも………………慣れて…いるけれど…………………ハァ……………ハァ………」
ロマン「ーーーーーーーーー!!」
ケロマツ「やっぱりおいら…悔しいよぉっ……!!!」
怒りが、唐突にこみ上げた。
ごくわずかとは言え同じ時を過ごし、人間であった自分を受け入れてくれた友の涙は、ロマンの憤りを復讐へと変換させることをやめなかった。
ロマン「…………………………これ、預かってて。奴らはどこへ行ったの?」
『真っ白で何も書かれていない本』をケロマツの頭の上に乗せたロマンは、平坦な声で呟き、立ち上がる。
ケロマツ「だ……駄目だよロマン…!! ベアーズは2匹…………君1匹で敵うはずが…」
ロマン「奴らはどこへ行ったの?」
今度は、やや語勢を強めて行ってみる。
ケロマツ「…………東の……森の…方」
ロマン「……………………………わかった」
徐に歩みを進めるロマン。ケロマツはその厳かなまでに頼もしい背中を、半開きの眼差しで見届けていた。
2015-03-19 20:30:35
[15] T.T.
黄昏時ー小道のダンジョンから外れた東の森には、体の大きさの倍ほどあるふろしきを持ちながら闊歩するヤンチャムとクマシュンの姿があった。
ヤンチャム「いや〜、今日も満足満足! ガリ勉をギッタンギッタンにできてよお」
クマシュン「そんなに憎いのなら、殺せばいいのに?」
ヤンチャム「いや、そいつぁ駄目だ。ケロマツはオレっちにとっちゃあ、言わばサンドバッグ的存在。あいつにだきゃ死なれてもらっちゃあ困る」
クマシュン「それもそうね。おまけにこーんな分厚い本や、かおるキノコまでGETできちゃったし」
ヤンチャム「ああ。『サバイバルタウン』の商人に売りつけりゃ金がガッポガッポ……って、ん?」
ロマン「待つんだ! 探検隊ベアーズ!」
二匹の行く手を阻むかのように颯爽と登場したロマン。ケロマツから教わったルートを行き、ヤンチャムたちをここぞとばかりに待ち伏せしていたのだ。
ヤンチャム「誰かと思いやァ先刻のイガグリ坊主じゃねえか。……で、何の用だァ!?」
クマシュン「敵討ちのつもりかしら?」
ロマン「……………ベアーズ、僕はお前達を許さない」
突き刺すように鋭いが、どこか柔和な面影のある眼差しは、ヤンチャムたちをほんの一瞬だけ尻込みさせた。
ヤンチャム「…! ハッ、上等だぜ!!」
クマシュン「アタシたちの邪魔をするなら消えてもらうまで! 冷凍ビーm」
ヤンチャム「クマちゃんはそのふろしき担いで下がってろ。あんな坊主、オレっち一匹で十分だ」
ロマン「……………………」
イガグリの如く堅牢な両手は憤懣に満たされ、小刻みに震えている。この時のロマンは、驚くほど冷静だった。
ヤンチャム「さっきビビって何もできなかったチキン野郎が!! 大口叩いてんじゃねえよ!!」
ズゴゴゴゴゴ…
秘伝技‘怪力’により近くの大木を根っこから引き上げ、軽々と持ち上げるヤンチャム。
ヤンチャム「テメェなんぞ、サンドバッグにすらならねえ!!!」
ワサワサワサ…
担がれた大木は北北西からの風を受け、悲鳴をあげるように葉を散らしてゆく。同時に、その木はロマンめがけて放たれていた。
クマシュン「!?(避けようとしない…!?)」
ロマン「…………………………」
ズドォン!!!
無抵抗に大木の下敷きとなるロマン。地面に落下した反動でいくつもの枝は折れ、幹は真っ二つになっていた。
ロマン「………こんなもんじゃ、ないはず……」
ヤンチャム「な!!? 立っただとォ!!?」
ロマン「ケロマツがお前から受けた傷は! こんなもんじゃないはずだ!」
ヤンチャム「う、うるせえええええええ!!!!」
滝のように流れ出した汗を纏い、高速で殴りかかるヤンチャム。ロマンはわざと攻撃を受け、敵に焦りを与えてから接近戦に持ち込むことを狙っていたのだ。
ヤンチャム「死ね!!!!! スカイアッp」
ロマン「気合いパンチ!!」
バキィ…!!
ヤンチャム「ぅがっ……………がっ…………!???」
クマシュン「ヤ、ヤンチャム君ー!??」
ロマン「ケロマツが一体、何をしたっていうんだ…!!」
メリメリメリメリ!!
獅子奮迅の気合いパンチを左頬に喰らったヤンチャム。ロマンはその攻撃をやめることができず、拳だけでヤンチャムを地面にめり込ませてしまった。
クマシュン「いやーーーー!!? ヤンチャム君がーーーー!??」
ロマン「ハァ………ハァ…」
キリッ
クマシュン「ひっ!?」
ロマン「ケロマツの本、返してよ?」
クマシュン「返します返します許してくださーい!!」
ぴゅーん
相方の無残な姿を目の当たりにし、消え失せるように奔走するクマシュン。
ロマンは彼女が去り際に放り投げていったふろしきをキャッチし、夕陽に向かって静かにガッツポーズをするのであった。
2015-03-30 17:03:00
[16] T.T.
ロマン「(それにしても、すごい…! さっきはあんな攻撃を受けたはずなのに、もう痛みが消えている)」
元来た道を探索するようにのんびりと辿って行く途中、ポケモンの持つ驚異的な耐久力・治癒力に気付き始める。人間時代の感覚など粗方喪失していた。
ロマン「(これなら、どこへだって行けそうだ…)」
ケロマツ「お〜い、ロマ〜ン!!」
ロマン「あっ、ケロマツ!」
息を切らしながら一心不乱に駆けつけてくるケロマツ。彼もまた創痍がすっかり癒え、けろっとした様子だった。
ケロマツ「ゼェ…ゼェ…。あまりにも帰りが遅いもんだから心配しちゃったよ〜」
ロマン「ごめんごめん(本を取り返した後散歩してたなんて言えないや…)」
不思議と笑みがこぼれる。
ロマン「ケロマツこそ、もう大丈夫なの?」
ケロマツ「1時間経ったからね。今までおいらがヤンチャムに殴られた後、完全に回復するまでの平均時間を求めた結果、1時間っていう結論を導き出せたんだ」
ロマン「へぇ〜、よくわからないけどすごいや!」
長らく立ちっぱなしであることに気付いた2匹は、近くの切り株に腰を下ろす。
ケロマツ「よいしょ……。!そうだ、本は」
ロマン「持ち主に返さなきゃ」
『真っ白で何も書かれていない本』と『キノコ図鑑』が交換される。
ケロマツ「………ロマン、今日は本当にありがとう」
ロマン「へへ、当然のことだよ」
ケロマツ「おいら…こんな風に弱虫で、いじめられることだって多々。おまけに探検隊を組みたくても仲間すらいない。…………でもね、今日はー」
パァ ァ ーーーー … ッ
ロマン・ケロマツ「??」
2匹は眩い光に包まれた。
ロマンの持つ『真っ白で何も書かれていない本』が、ケロマツの気持ちに呼応するかのように唐突に輝きだしたのだ。
ケロマツ「…! 眩しい……。何だろう……」
ロマン「! 見てケロマツ。本が…!」
『真っ白で何も書かれていない本』が、『絵本』へと変貌を遂げた瞬間。
光が消滅した時、たった1枚の絵が完成されていた。
『絵本』の表紙ーフロントカバーに鮮やかに描かれたロマン・ケロマツ。
絵の中の2匹は探検隊のバンダナを巻き、煌びやかな黄金を手にしていた。
ロマン「こ、こんなことって…………」
ケロマツ「(探検隊…。財宝…)」
この時、ケロマツは悟った。寛容な友は自分にとってかけがえのない存在になるということを。
そして、ロマンは確信した。聡明な仲間は自分に新しい風景を見せてくれるということを。
ケロマツ「ロマン……。おいらと…探検隊を組んでくれるかい?」
ロマン「もちろん! 改めてよろしくね、ケロマツ!」
ケロマツ「ありがとう! よろしく、ロマン!」
ロマン「僕たちこれから、ずっと一緒だね!」
2匹は笑った。
取り繕った笑顔ではなく、今度は心の底からー
第1話『出会いのフロントカバー』ー完ー
2015-03-31 23:26:52
[17] T.T.
今回はメインキャラの紹介です。
『ヤンチャム』♂
探検隊『ベアーズ』のリーダー。「テメェの物は、オレっちの物。オレっちの物も、オレっちの物」
という某ガキ大将的主義を掲げ、日々略奪を繰り返す不良少年。もちろん、依頼などは一切引き受けない。趣味は問答無用でケロマツを殴ること。
『クマシュン』♀
探検隊『ベアーズ』の一員。欲しいものがあれば力尽くで手に入れてしまうヤンチャムに憧れ、入隊を果たした悪ノリ少女。容姿の可愛らしさから幼い頃より甘やかされすぎたため、わがままな性格となった。
2015-04-02 19:56:36
[18] T.T.
第2話『結成の日』
夜ー 眼前にそびえ立つ巨大な塔。混沌なまでにその周りで繁茂し合う蔓草は、古きを物語っているかのよう。
ロマンたちは知の聖地・ゲロゲ文庫の門前に来ていた。
ロマン「うわ〜! 高〜い!」
ケロマツ「さ、ここがおいらの家だよ。この門を開けば、おいらたちの探検隊生活の第一歩がスタートする…。準備はいいかい?」
ロマン「もちろん!」
ギィ… バタン
ケロマツ「ただいま〜。あ、ガマゲロゲさん!」
ガマゲロゲ「お〜ケロマツや、おかえり。待っておったぞい」
扉の先にある世界は、書物一色。円柱状の塔の壁に隙間なく詰め込まれた500万冊の本。中に入るや否や、木の香りが立ち込めっているのがわかった。
そして塔の中央には、体よりも小さな古椅子に座りペンを走らせているポケモンが一匹…。
ロマン「ここにも、そこにも、あそこにも本が! こんなの初めて見たよ」
ガマゲロゲ「ん?? お前さんは…………ケロマツの友達かいの?」
ロマン「はい。えーと、ハリマロンのロマンです。よろしくお願いします!」
ガマゲロゲ「ほっほっほ。ケロマツの友達が家へ遊びにやって来るとはな。コホン、ワシはガマゲロゲ。図書館の館長、執筆家をやっておる」
ケロマツの5倍ほどある大きさの、壮年の蛙ポケモン。肥満気味の下っ腹に葡萄の如きコブ、そして充血した真紅の眼差しが特徴的だ。
ガマゲロゲ「まあ、今日はゆっくりしていきなさい」
ケロマツ「………あのね、ガマゲロゲさん。実はおいら…」
ガチャ
???「うふ❤︎ 実験❤︎ 実験❤︎ 楽しいわ〜❤︎ 次は何を実験しようかしら〜❤︎」
不意に厠の扉から、三角フラスコでお手玉をするポケモンがロマンたちの方へ歩み寄ってくる。
ケロマツ「ただいま、Dr.オーベム。今日は友達を連れてきたよ」
オーベム「あ〜らケロちゃん❤︎ 随分と可愛い坊やじゃない❤︎ もっとも、世界で一番可愛いのはアタシのダーリン・ガマちゃんだけどねぃっ❤︎ ね、ダーリン❤︎」
ガマゲロゲ「そ、そうじゃな…」
ロマン「あ、僕ロマンって言います。性別はどちらですか…?」
オーベム「心は♀、体は♂❤︎ 好物はダーリンのとびっきりのえ・が・お❤︎ それがこのアタシ、オーベムよ❤︎ 皆からはドクターって呼ばれているわ❤︎」
チュッ❤︎
ロマン「ひゃあ!?」
オーベム「ん〜❤︎ よろしくねぃっ❤︎」
お手玉をやめ、ロマンの右頬に厚い唇を接着させるDr.オーベム。宇宙人の如き風貌にして、質感のある頭部、点滅する3本の指が目につく。
ガマゲロゲ「そうじゃケロマツ。先刻は何か言いたげじゃったが……どうかしたのかのう?」
ケロマツ「………実は…」
ケロマツはガマゲロゲとDr.オーベムに、ロマンが元々人間の子供であったこと、さらに自分がロマンと共に探検隊を組むという旨の話を伝える。
2015-04-03 14:58:29
[19] T.T.
第2話の途中ですが、ガマゲロゲとDr.オーベムのキャラ設定を挟んでおきます。作中で触れることはほとんどないと思うので。
『ガマゲロゲ』♂
蔵書数500万冊を誇る大図書館「ゲロゲ文庫」の館長兼執筆家。ケロマツの憧れの的でもある。若かりし時はDr.オーベムと共に伝説の探検家と謳われたほど。冒険の道中で、自分が見てきたものについて多くのポケモンに知ってもらうことを目的に、「ゲロゲ文庫」を創設。文武両道の精神の持ち主であり、その知識の量は計り知れない。また、偶然洞窟で見つけた孤児・ケロマツを親代わりになって養うことを決意し、その後探検隊を引退するなど、広い心の持ち主としても有名。ケロマツからは父親のように慕われている。
『Dr.オーベム』♂?
科学者にして生粋のオカマ。元々は探検家・ガマゲロゲのファンにすぎなかったが、その天才的な頭脳を買われ、入隊を果たす。「キズぐすり」や「タウリン」など、不思議のダンジョンの世界では珍しいものを発明するのが好き。探検隊引退後も発明をやめることなく、今なお「ゲロゲ文庫」では、天才Dr.オーベムの実験結果を文豪ガマゲロゲが本にまとめるという手法が取られている。また、語尾には必ず❤︎がつく。料理も得意とするため、ケロマツからは母親のように慕われている。
2015-04-05 20:41:48
[20] T.T.
オーベム「ロ、ロマンちゃんが……人間…??❤︎」
ガマゲロゲ「…………生きておったのか………。人間という種族は……!!」
本来この世界ではありえない人間の存在が、知識人の心を震撼させたのは言うまでもない。
ロマン「はい。他のことは何も覚えていないのだけれども…わかるんです。『自分は人間だった』ってことは」
ケロマツ「ロマン自身が言ってるんだから間違いないよ!」
ガマゲロゲ「…Dr.や、あの本を出してくれんかの?」
オーベム「ん〜了解っ❤︎ サイコキネシス❤︎」
ワチョワチョワチョワチョ…
点滅する指先から一筋の光線を、遥か上方の本棚めがけて発射するオーベム。光線が命中した1冊の本はサイコパワーにより引きつけられ、見事ガマゲロゲの手元まで浮遊した。
ガマゲロゲ「これはこの図書館に古くから存在する、作者不詳の説話集じゃ」
ケロマツ「神話や伝説に関する内容が盛り込まれた本だね」
ガマゲロゲ「さよう。人間に関する記述もあり、ワシも解読を続けておるのじゃが、いかんせん文字が薄れていてのう…」
ロマンはその一際古びた説話集を覗き込んでみるが、そこにはアーボの踊りとも言うべき難解な文字が羅列しているだけだった。
ガマゲロゲ「ワシはこの1行をこう解釈しとる。『人間とは、高度な文明により平和な暮らしを実現する種族である』、と」
ロマン「高度な…文明??」
ガマゲロゲ「要するに、荒くれ者が多く存在する我々ポケモンの世界とは正反対ってことじゃ」
ケロマツ「ところでガマゲロゲさん、探検隊の件なんだけど…」
ガマゲロゲ「ほっほっほ。知的好奇心旺盛なお前さんなら、いずれこう言うと思っておったわい。義息子の旅立ちに反対する理由が見当たらない」
ケロマツ「ありがとうガマゲロゲさん!」
ガマゲロゲ「…ただし、ワシが気がかりなのはロマンくん、お前さんの方じゃ」
ロマン「どういうことですか……?」
徐に椅子から立ち上がり、怪訝そうな顔でロマンを見つめるガマゲロゲ。
ガマゲロゲ「先ほども言った通り、ここは様々な危険が伴うポケモンの世界。ロマンくんが暮らしておったであろう平和な人間世界とは大きく異なっておる……。そんなポケモンだけの浮世を渡り歩く覚悟は、できておるか?」
ロマン「はい! 僕、この世界をケロマツと一緒に探検して、色んなものに触れていきたいんです!」
ロマンのどこまでもまっすぐな眼差しは、自信と希望に満ちていた。
ケロマツ「ロマン…!」
オーベム「これは将来が楽しみだわ〜❤︎」
ガマゲロゲ「いい返事じゃ、ロマンくん。さ、今宵は2人の探検隊結成を祝して宴じゃ!」
2015-04-25 15:01:51
[21] T.T.
ミッドナイトの地下室。ゲロゲ文庫の食堂のテーブルには、贅沢を極めた料理がDr.オーベムの手によって召喚されていた。
オーベム「はいっ❤︎ ダーリン、ケロちゃん、ロマンちゃん❤︎ 今日はご馳走よ❤︎」
ケロマツ「キノコステーキにキノコのチーズ焼き、キノコのマヨネーズ炒め、おまけにキノコスープまで…! ん〜いい匂い!」
オーベム「ケロちゃんたちが採ってきてくれた研究用のかおるキノコが余ったもんだから、今夜はキノコ料理に挑戦してみたのっ❤︎」
ロマン「ジュルリどれも美味しそう…! ドクターさんありがとう!」
ガマゲロゲ「ほっほっほ。たっぷり食べて体力をつけるんじゃぞ」
人間の時と同じように自ずと口内から分泌される液体ーよだれを抑止できないロマン。熟成されたキノコ料理は、風味だけでポケモンたちの胃を満たすかのよう。
ガマゲロゲ「コホン。改めて今日は、ケロマツに友達ができたこと…」
オーベム「そして2人の探検隊結成を祝って…❤︎」
ロマンとケロマツはオボンジュースの入ったコップを、ガマゲロゲとDr.オーベムはカシスオボンの入ったグラスを持ち上げる。
全員「かんぱ〜い!!!」
ロマン・ケロマツ「いただきまーす♪」
ガマゲロゲ「おめでとう! ケロマツ、ロマンくん!」
ガツガツムシャムシャガツガツムシャ…
とろけるような旨味が、口の中にぶわっと広がる。かおるキノコ本来の持つ風味と洗練された味付けは絶妙なハーモニーを奏でていた。
ロマン「うわ〜おいしい! こんな料理、食べたことがないよ!」
ケロマツ「Dr.オーベムの料理の腕前はプロ級だからね」
ガマゲロゲ「そうじゃモグモグ。探検隊のチーム名は何にするか…決まったかの?」
ケロマツ「おいらが前々から考えていた案ならあるよ。えーとね……」
ガツガツムシャムシャガツガツムシャ…
料理を頬張る手は止まらない。
ロマン「………『トレジャー』??」
ケロマツ「そう。財宝を意味する言葉でね、浪漫が溢れていると思うんだ。どうかな?」
ロマン「チーム・トレジャー……!
うん、良いと思うよ!」
ケロマツ「ありがとうロマン! いつかロマンの持つ『絵本』の表紙に描かれてた財宝も探し…あ!!」
ガマゲロゲ「ん? どうかしたかの??」
ケロマツ「『絵本』だよ『絵本』!
ロマン、ちょっとそれ貸して」
唐突に、ロマンが倒れていたときから携えている『絵本』の存在に気づくケロマツ。ケロマツはガマゲロゲに、『絵本』は最初真っ白で何も描かれていなかったこと、そして後から自動的に『絵本』の表紙が描かれたことを伝える。
ガマゲロゲ「自動的に描かれる不思議な『絵本』…? すまんが、ワシにはちとわからぬ…」
ケロマツ「そっかー………」
ロマン「まあまあケロマツ。早く食べないとせっかくのご馳走が冷めちゃうよ?」
オーベム「宴は楽しまなきゃ損よ〜❤︎」
ケロマツ「んー……それもそうだね」
ガツガツムシャムシャガツガツムシャ…
楽しい時間はあっという間に過ぎ去った。
朝ーゲロゲ文庫の門前には、ガマゲロゲとDr.オーベムに見送られるロマン・ケロマツの姿があった。旅立ちには絶好の陽気だ。
オーベム「ケロちゃん、ロマンちゃん❤︎ 一旦ここでお別れね❤︎」
ケロマツ「2人には本当にお世話になったよ。感謝してもしきれないほど………」
ケロマツはそっと目を瞑る。するとそこには、初めてガマゲロゲたちと出会った時から昨晩の宴までの記憶が鮮明に写っていた。
ケロマツ「じゃあ改めて…行ってきます!」
ガマゲロゲ「グスン…。たまには戻って来るんじゃぞー!」
オーベム「泣いたダーリンもキャワワ❤︎ うふ❤︎ いってらっしゃ〜い❤︎」
ロマン「さようならー! 元気でねー!」
ドキドキとワクワクに胸膨らませ、チーム・トレジャーは探検隊としての第一歩を踏み出すのであった。
第2話『結成の日』ー完ー
2015-04-26 21:30:54
[22] T.T.
第3話『サバイバルタウンへ』その1
陽光うららかな朝。道端に人知れず芽吹く草花は水滴を纏い、ガラスの如く煌めく。
ロマンとケロマツはゲロゲ文庫を後にしたあと、ダンジョン・青緑の小道を南に進んでいた。
ロマン「わわっ! ケロマツ、『絵本』が…!」
ケロマツ「あっ、新しいページが描かれている!」
道中、ロマンの持つ『絵本』の1ページ目が更新されたのに気付く。
そこには昨晩の宴で馬鹿騒ぎをするロマン・ケロマツ・ガマゲロゲ・Dr.オーベムの姿があった。
ロマン「いつの間に……。全然わからなかったよ」
ケロマツ「昨日の夕方に『絵本』の表紙が描かれた時は、『絵本』は眩しい光を放っていた…。今までそれに気づかなかったってことは、昨日おいらたちが眠っている間に更新された可能性が高いね」
ロマン「本当に、不思議な『絵本』………」
顔をしかめ、『絵本』を上下に揺り動かしてみるロマン。
ケロマツ「その本が何を意味しているか、わかる日が来るといい
ね」
ロマン「うん。ところで僕たちは今、どこへ向かっているの?」
ケロマツ「『サバイバルタウン』。探検隊の町さ」
ロマン「探検隊の、町……??」
サバイバルタウンとは、ゲロゲ文庫のすぐ南に位置する大規模集落である。アイテムショップや倉庫、銀行、宿屋といった様々な施設が存在するため、多くの探検隊が集う拠点となっている。
ケロマツ「おいらも噂でしか聞いたことないけど、とっても賑やかな所らしいんだ!」
ロマン「へぇ〜、楽しみ〜!」
ケロマツ「ゲロゲ文庫とは目と鼻の先にあるから、もうじき着くと思うよ」
ロマン「あっ、看板だ!」
前方の看板が東の方角に、「この先サバイバルタウン」と示しているのを見る。東の林を抜ければ集落は目の前だ。
ロマン「よし、早速行ってみよう…」
???1「お前たち! そこで何をしている!!」
???2「泥棒はお帰り願うアルよ〜!!」
ロマン・ケロマツ「!?」
スタタン!
西にある赤土の崖の上から2匹のポケモンの声が聞こえてくるや否や、そのポケモンたちは宙へ舞い、ロマンたちの目の前に華麗に着地する。
ロマン「ど…泥棒だなんてとんでもない!」
ケロマツ「おいらたちは探検隊としてサバイバルタウンにやって来ただけさ!」
???1「おっと、それは失敬」
???2「最近町には怪しいポケモンの出入りが多くててっきり……。すまないアル」
動揺するロマンたちに丁重に頭を下げる謎のポケモンたち。
???1「俺は探検隊『タンホワタン』のリーダー、コジョフーだ。隣にいるデカいのはマルノーム。…お前たちは?」
ケロマツ「おいら、探検隊『トレジャー』のケロマツ。本物の探検隊に会えるなんて感激だよ」
マルノーム「いや〜そんな〜。よろしくアル♪」
嬉しさのあまり、髭でケロマツにボディータッチをするマルノーム。
ロマン「僕はハリマロンのロマン。新米だけどよろしくね」
コジョフー「ほう。ポケモンなのに名前があるとは珍しいな」
ロマン「僕、元はポケモンじゃなくて、人間だったんだ」
マルノーム「アルル!??」
コジョフー「………!!!」
唐突にロマンの胸ぐらを掴むコジョフー。冷静だったタンホワタンのリーダーの表情は一変して、焦燥を含むものになった。
ケロマツ「ちょっと! 何をするのさ!?」
コジョフー「静かにしろ! 町の輩が聞きつけたらどうするつもりだ!」
ロマン「〜〜〜〜〜!!!」
コジョフー「よく聞け。サバイバルタウンのポケモンは何故か皆、『人間』の存在をひどく嫌っている…!」
ケロマツ「え!?」
コジョフー「人間だということを公にすればお前、殺されるかもしれないんだ!!」
2015-05-05 11:42:25
[23] T.T.
悪役の設定に行き詰まった結果、放置したみたいになってしまいました。
更新します。今回は説明的な所が多いですが、ご了承いただければと思います。
第3話『サバイバルタウンへ』その2
ロマン「ハァ……ハァ……! 殺される……? 何で…!?」
コジョフーに解放されたロマンは草の上に尻もちをつく。タンホワタンのリーダーの、体格には似合わぬ強烈なパワーを身を以て感じていた。
コジョフー「サバイバルタウンの町長が言うんだ。『人間は昔、ポケモンと共に暮らしていた時代、ポケモンたちを差別していた。自ら人間を名乗る者は殺せ』ってな」
ロマン「差別だって…!? 人間が??」
コジョフー「俺にはこの町長の言うことが本当かどうか、分からない」
マルノーム「そもそも人間なんて伝説上の生き物だと思っていたアル。それが昔ポケモンと共存していたなんて…びっくりアルよ」
ケロマツ「(マルノームの言う通りだ。人間とポケモンが接点を持っていたなんて…。それも、差別か。ガマゲロゲさんの口からは出てこなかった言葉だ…)」
『人間とは、高度な文明により平和な暮らしを実現する種族である』。2匹はこの文言と、サバイバルタウンの町長の言うことに矛盾を見出していた。
コジョフー「俺も思っていたさ。まさか人間を自称する者など現れないだろう、と。だがそれがどうだ。今、俺の目の前に『人間』がいる…!」
ロマン「…!」
ケロマツ「ちょっと待って。何でコジョフーはロマンの言うことを簡単に信じちゃうのさ?」
コジョフー「『人間なんて伝説上の生き物』。探検家たる者、そんな先入観に囚われてはいけない。それだけの話だ」
マルノーム「ミーたちだって嬉しいんだアル! 本物の人間に出会えるなんて!」
ケロマツ「マルノーム…!」
唐突な『人間』の登場に驚かされたコジョフーだが、彼の表情からは微かな笑みが垣間見える。
コジョフー「受け取れ、ロマン。こうした方が探検隊のリーダーらしく見えるぞ」
ギュッ
ロマン「これは…」
ロマンの角に赤いバンダナを巻いてあげるコジョフー。
ケロマツ「探検隊のバンダナじゃないか! もらっちゃっていいの?」
マルノーム「2つ持ってるから心配いらないアルよ。ヒソヒソ(リーダーは自ら人間を名乗るユーの度胸が気に入ったんだアル)」
ロマン「ありがとう! タンホワタン!」
赤いバンダナが、『絵本』の表紙に描かれたロマンが巻いているものと同じであることは、言うまでもない。
コジョフー「よし。俺たちがお前たちをサバイバルタウンまで案内してやろう」
ケロマツ「何から何まで…。本当、至れり尽くせりだよ」
コジョフー「ただしロマン。お前が人間だということを公にしてはならない。サバイバルタウンではお前は飽くまで一匹のポケモン。…いいな?」
ロマン「うん、わかった…」
ロマンとコジョフーが指切りを交わした、そのときである。
マリル・ペロッパフ・チラーミィ「きゃ〜❤︎ いたいた、コジョフーく〜ん❤︎」
コジョフー「まずいな。また、追っ掛けか…! おい、町へ急ぐぞ!」
ケロマツ「あ、うん。(逃げる必要があるのか分からないけど)」
マルノーム「………(羨ましいアル
なぁ、リーダーは。モテモテで)」
クールなリーダー・コジョフーを先頭に東の林を駆け抜けていくロマンとケロマツ。探検隊の町はもうすぐだ。
一方、林の木の上ではー
???「ふわ〜…ぁ … 。騒がしくて眠ろうにも眠れないでござる
よ…」
大きな伸びをしながら、そのポケモンは辺りを見回してみる。
???「今しがた『人間』という単語が耳に入ったような気がしたが…拙者の聞き間違いでござるかな?」
2015-07-30 18:43:52
[24] 蒼葉
こんばんは!蒼葉です。
まさか人間とポケモンが一緒に
暮らしていたとは……
新たな事実に驚かされました。
謎のポケモンの正体も気になり
ます。
○感謝○
僕の書いている小説に
コメントを書いて頂き
ありがとうございます!
これからも精進して行こうと
思います!
長文失礼しました。
2015-07-30 22:59:44
[25] T.T.
蒼葉さん、コメントありがとうございます!
私の小説は特に展開が遅いので、謎のポケモンの正体については気長にお待ちいただければと思います(笑)
では、更新しましょう。ちなみにコジョフーの追っ掛けの3人組は、1話のタマゲタケのような完全なモブキャラです。別な話で再登場させるつもりはありません。
第3話『サバイバルタウンへ』その3
コジョフー「ふー……。もう大丈夫だな」
ロマン「別に逃げなくてもよかったんじゃないの?」
黄色い声援の追っ手から逃れ、ロマンたちはサバイバルタウンの外れにある高台をのんびり歩いていた。北には広漠たる海が見える。
コジョフー「何というか… 俺の一番苦手なタイプだ。ああいうのは」
マルノーム「とかいって本当は嬉しいくせにアル〜?」
コジョフー「う、うるさいぞ! マルノーム!」
ロマン・ケロマツ「…(汗)」
相方を肘…もとい髭でつっつくマルノームと、赤面し子供のような金切声を上げるコジョフー。
ケロマツ「ところでさコジョフー、これからどこへ向かうつもりなんだい?」
コジョフー「サバイバルタウンの町長の家だ」
ロマン「ええっ!? 人間は殺せっていう…あの……!?」
反人間主義と思しき町長に対して、恐怖と狼狽を隠せないロマン。
コジョフー「案ずるな。町長の‘ヌメルゴン’氏は発言こそ過激だが、天真爛漫な性格と聞く」
ロマン「そ、そうなんだ…。僕、殺されないかな?」
マルノーム「ポケモンらしく振舞っていれば問題ないアルよ」
コジョフー「まあ今後サバイバルタウンに在住する以上、挨拶くらいはしておいた方が良いからな」
噂をしていると、遥か東の絶壁に一軒家らしき建物が見えてきた。波は高く、打ちつけた水しぶきが建物をほどよく湿らせているようだ。
コジョフー「おそらく向こうに見えるのが町長の家だろう」
ケロマツ「おそらくって…タンホワタンは会ったことがないのかい?」
コジョフー「ああ。サバイバルタウンを拠点にしているわけではないからな。行ったことがあるのは賑やかな広場だけだ」
マルノーム「ミーたちは基本的に旅先で野宿アル」
ロマン「え、何でわざわざ…?」
コジョフー「……………………‘あの島’を攻略するためだ」
コジョフーはその場で座禅を組み、北の大海原の彼方に見える島を指差す。
マルノーム「‘吹雪の島’。氷ポケモンも凍てつく寒さ故に、最難関ダンジョンと謳われるほどだアル」
ケロマツ「おいら、本で読んだことがある! すすんで開拓する探検家が少ないから、未知の財宝が眠ってる可能性が高いんだよね?」
マルノーム「その通り! その財宝を見つけ出すのが、ミーたちタンホワタンの目標アルよ!」
ロマン「へ〜! ちゃんとした目標があるっていいね!」
大冒険への憧憬はロマンの心を照らすかのよう。
それとは反対に、コジョフーは微動だにせず、吹雪の島に向かって祈祷していた。
コジョフー「大事なのは目標に見合った努力だ。………確かに、サバイバルタウンに住めば暖かい布団で寝られる。食糧に困ることもない。しかしそれでは、過酷な吹雪の島で生き延びることなど不可能。財宝も夢のまた夢で終わるだろう」
マルノーム「リーダー……」
コジョフー「だから俺たちは野宿という選択肢を選んだ。今の俺はまだ甘い。もっと、修行を積まないと…!!」
ケロマツ「(探検隊ってバカ騒ぎばっかりしてるイメージがあるけど……真摯なポケモンもいるんだなぁ)」
ロマン「真面目だね。コジョフーは」
一途に高見を思慕する姿に、ロマンたちは敬意すら覚える。
コジョフー「…………………話が逸れたな。すまない…」
マリル・ペロッパフ・チラーミィ「見つけた❤︎ 待ってよコジョフーく〜ん❤︎」
忘れた頃にやって来る熱狂的なファン。コジョフーは即座に立ち上がり、逃走体勢を整える。
コジョフー「…!! おいトレジャー、お前たちとは一旦お別れだ!」
ロマン「え!?」
コジョフー「本当は広場まで案内したかったが…追っ手がここまで来るとは想定外だ! また会えるといいな!」
3匹の追っ掛けをヒラリとかわし、間を縫うように走るコジョフー。
ケロマツ「人気者も大変だねぇ」
ロマン「元気でねー!!」
マルノーム「リーダー、待ってくれアル〜! ミーも女の子にきゃーきゃー言われたいアルよ〜!」
慌てるあまり、口からヘドロを撒き散らしながらヌルヌル前進するマルノーム。
マリル「きゃー!! マルノームよー!!」
ペロッパフ「不潔ー!!」
チラーミィ「最低ー!!」
ロマン・ケロマツ「別の意味できゃーきゃー言われてる…(汗)」
2015-07-31 21:58:30
[26] T.T.
第3話『サバイバルタウンへ』その4
ヌメルゴン「いや〜、よく来たんだじょー! ゆっくりしていくがいいじょー!」
ケロマツ「うわっ!?」
まんまるとした怪獣と握手をし、空中で上下に揺り動かされるケロマツ。
ロマンたちはタンホワタンと別れた後、サバイバルタウンの町長・ヌメルゴンの家でおもてなしを受けていた。
ロマン「町長さん(モグモグ)。この木の実(モグモグ)、おいしいね!」
ヌメルゴン「それはモモンの実といって、ボキの大好物なんだじょー!」
ロマン「僕も好きだなあ。甘いものは(モグモグ)」
ヌメルゴン「その甘さこそがモモンの実の魅力なんだじょー!」
ロマン「うんうん! みずみずしい食感もまたいいよね」
ケロマツ「(ロマン、殺されるどころか馴染んじゃってるよ…)(汗)」
テーブルの上に大量に出されたモモンの実をかじりつつ、安堵のため息をつくケロマツ。天真爛漫な町長というのは本当のようだ。
ヌメルゴン「あ、そうそう。新しくこの町に住むキミたちに、1つお願いがあるんだじょー」
ロマン「お願い…?」
ヌメルゴン「なんでもこの近くに、あの忌々しい『人間』を名乗る者がいるらしいんだじょー」
ロマン・ケロマツ「!???」
驚愕のあまり、咀嚼していたモモンの実を喉に詰まらせそうになる。
ヌメルゴン「人間は大昔ポケモンを差別していた、最低最悪の種族だじょー。もしそんな奴を見かけたら、ボキに言ってほしいんだじょー」
ロマン「う……うん(ゴクリ)」
ヌメルゴン「人間なんて、こうしてやるじょー☆」
ギュ ゥ ゥ …
特大モモンの実を片手で軽々と握りつぶし、指についた果汁を舐め回すヌメルゴン。
ロマン「(ひぃ〜! この人、怖い)(泣)」
笑顔でモモンの実を味わう怪獣の姿は、ロマンの恐怖心をいっそう掻き立てる。
2匹はこの修羅場を切り抜けようと、不自然な笑みを取り繕って同調してみせる。
ケロマツ「あは……本当、人間とか許せないよね…」
ヌメルゴン「あり? どうしたんだじょー? 顔色が悪いじょー」
ケロマツ「い、いや気のせいだよ!」
ロマン「僕たちそろそろ帰ります!」
バタン!
ヌメルゴン「ガッポガッポ稼ぐんだじょ〜!」
頭が真っ白になって退出するトレジャー。手足には冷汗が川のように流れている。
ロマン「ハァ…ハァ…。なんで人間がいるってわかったんだろう…??」
ケロマツ「あの場にはタンホワタン以外誰もいなかったし…そう考えるとおかしいよね」
ロマン「でもよかった。バレずに済んで」
澄み渡った空を仰ぎ、徐に深呼吸をする。
ケロマツ「ま、今のことは忘れて広場まで行ってみようよ」
ロマン「その方がいいね」
ケロマツ「よし! どっちが先に到着できるか、競走だ!」
一目散に丘を駆け下りるケロマツ。
ロマン「待ってよケロマツ〜! えーっと、『絵本』はどこに置いたかな………って、痛い!」
???「!!」
ゴツン
不意にロマンは、藤色のマントで全身を覆ったポケモンに衝突する。
ロマン「あわわっ! ごめんなさい、大丈夫?」
???「貴様ッ…!!!」
ゴゴゴゴゴゴ…
マントからは菖蒲色の目が血走り、睨みを利かせている。
???「食べカスがついているぞ。だらしのない」
モモンの実の果肉がついたままの口元を、そのポケモンはマントで拭き取ってあげる。ひどく潔癖症のようだ。
ロマン「わざわざありがとう。君、名前は…?」
???「貴様に教える義理などない。………さらばだ」
重々しい口調でそう言い残し、マントのポケモンはヌメルゴンの家の中へ入るのであった。
2015-08-02 16:47:19
[27] T.T.
6世代のポケダンが発売されましたね。私の小説など本家ポケダンに比べたら稚拙ですが、温かい目で見守っていただければと思います。
第4話『初仕事?』その1
ケロマツ「ロマン、遅いよ〜」
ロマン「ハァ…ハァ…。ごめん」
ここは探検隊の町・サバイバルタウンの商店街。夥しい数のポケモンが往来しており、ロマンたちの話し声がかき消されるほどだ。
ロマン「見たことのないポケモンがあんなにたくさん…! 本当に賑やかな所なんだね!」
ケロマツ「おいらもびっくりだよ。はぐれないように気をつけてね…」
ケロマツは注意喚起のため後ろを振り返ってみる。
ケロマツ「ってロマンがいない!?」
ロマン「わわっ!!?」
ポケモンたち「広場で『飲み比べ大会』やってるってよ!!」
ポケモンたち「どーせおばちゃんが無双するんじゃねーの!?」
ポケモンたち「まあ一見の価値はある。行こうぜ!!」
ロマン「ちょっと、押さないでよ〜!」
ポケモンたちの群衆の波にさらわれ、一瞬にしてケロマツとはぐれてしまったロマン。挙げ句の果てには屈強なポケモンによって突き飛ばされる始末である。
ロマン「いたたた…。ここは一体…?」
ドワァーーーーーーー!!!!!!
突如歓声が耳の穴を貫く。ロマンが行き着いた先は、飲み干された酒樽が散々ところがる広場であった。
カクレオン「新・記録ぅーーーー!! 倉庫のガルーラおばちゃん、名のある酒豪たちを100人抜きです!!」
ガルーラ「ぷはァーーー…。なんだいだらしないねえ!!!! アタシはまだ飲めるよ!!! もっと酒を持ってきなァ!!!!!」
グォォォォォーーーーン!!!!
カンガルーを模したようなポケモンが天高く咆哮する。
カクレオン「まさに最強のおばちゃん!! えー第256回『飲み比べ大会』、司会はこの私、ショップ・カクレオンがお送りしましたー!!」
カメレオンを模したようなポケモンは脱帽する。同時に、ロマン以外の観客は広場を後にし始めた。
ロマン「(あの飲み物っておいしいのかな…)(ゴクリ)」
???「あら、かわいい坊やね」
空の酒樽の後始末をするポケモンがロマンの方へ歩み寄る。
???「あなたもお酒飲んでいく?」
ロマン「えっ、いいの!?」
???「ウフフ。冗談よ。だってあなた、まだ子供だもの」
ロマン「そんな〜………ってあれ? 君は?」
???「私はクチート。そこでバーを経営しているわ」
2015-09-27 21:10:54