[1]颯人◆6RQCIAKXwE
【おーる おあ なっしん!】
此方は、颯人のオリトレ小説となります。
一応完全にオリジナルのキャラクターな予定です。
舞台はシンオウ地方、ポケモンリーグを目指して頑張る女の子のお話です。
特にシナリオに沿う予定はありません。ゆったりのんびり、勝手気ままな感じです。
気まぐれ更新になりそうです……。
それでも構わないよ!という方、
どうぞごゆっくりお楽しみくださいませ。
03/25 23:44
[18]颯人@ついった◆6RQCIAKXwE
忘れないうちに更新しときたいと思います
――――――
ジムに挑む前に一通り観光しておくことに決めたハルトは、クロガネ炭坑を出た後、まっすぐその足で博物館へと向かった。
よく冷房の効いた館内にはまばらに人がいる。
きょろきょろと物珍しげに辺りを見回すハルトの目に、大きな骨格標本が入ってきた。
「ほえー………おっきいねー」
腕を大きく広げた巨大なポケモンの骨格標本とその復元予想図を交互に見やる。
これ、何てポケモンなんだろう。
そう思ったハルトの心の声に答えるように、少し低めの柔らかい女性の声がした。
「これは、プテラの骨格標本だよ」
「プテラ?」
ハルトが振り向くとそこには、柔らかく微笑む女性が立っていた。
短く切り揃えられた髪は濡れたように艶やかな黒。
穏やかな光をたたえる、眼鏡の奥の瞳もまるで夜の闇のように黒いが、右目にだけ、ほんのすこし蒼い色が滲んでいる。
耳慣れぬポケモンの名前をおうむ返しに問うたハルトの隣に立ち、女性はプテラの骨を見上げた。
「何百、何千年も前のポケモンなんだ。このシンオウ地方で骨が見つかった、と言う話はまだ聞かないけどね」
「じゃあ、どこに住んでたんでしょう?」
「今のところ、カントー地方でよく骨が見つかっていてね。その骨から復元されたプテラを手持ちに入れてるトレーナーも、数こそ少ないけど確かに存在する」
「ふくげん?」
「もとに戻す、ってことだよ」
「もとに……生き返らせるってこと!?」
途端に目を輝かせたハルトに苦笑いしつつ、女性は少し離れた場所に飾ってある別のポケモンの骨格標本を指差した。
「あれはズガイドスというポケモンの化石。ズガイドスもずっと昔のポケモンなんだけど、やっぱり、骨から復元されたズガイドスを連れてるトレーナーもいるよ。ここクロガネのジムリーダーも、ズガイドスを使ってくるって話だ」
「ズガイドス……」
骨格標本を見ながらぽつりと呟く。
クロガネジムはいわタイプの使い手が集まると言うから、きっとあのポケモンもいわタイプなのだろう。
自分の手持ち――リンドウ、アオイ、仲間にしたばかりのイワークのマロン――でどうやって戦おうか。
一瞬トリップしかけたハルトは、はたと気付いたように隣の女性を見上げた。
「おねーさん、どうしてこんなに詳しいの?」
「ああ、……私はね、各地を巡って神話や昔話、古代のポケモンたちのことを調べているんだ」
「へぇー、すごいね!とっても物識りなんだ!」
「とっても、って程じゃないけどね」
「じゅうぶんだよ!」
こうして、女性に色々とレクチャーしてもらいながらハルトが博物館を一通り見て回った頃には、もう日も暮れようとしていた。
博物館の前で、ハルトは女性にぺこりと頭を下げた。
「今日はありがとうございました!」
「此方こそ。リーグ制覇、頑張ってね」
「はい!」
元気に返事をして、休息のためにポケモンセンターへ向かうハルトの背中を見て、女性はごく小さく息を吐いた。
『……なんで話しかけたりしたんだ』
「さあ。僕にも分からないよ」
『自分で分からねぇってなァどういうことだ?』
「なんか、話しかけてた。……これもまた必然、か」
辺りには誰もいなかったが、もしも誰かがいれば女性が独り言を言っているようにしか見えなかっただろう。
女性と会話を交わしている声は、彼女の頭に直接響いていた。
『必然、ねえ』
「何はともあれ、あの子と僕の縁(エニシ)は繋がった。……この出逢いがどんな結果を呼ぶか…楽しみだと思わないかい?ねえ、リオ」
言葉通り、楽しそうに唇を持ち上げる。
女性の頭に響く、リオと呼ばれた声の主は何か言いかけたようだったが、結局はため息で答えた。
――――――
ちょっと物語が進み始めます
≫Naturalさん
こちらこそお世話になりましたー
アイドル(?)二匹を気に入っていただけて幸いです
≫灰猫さん
はじめましてー^^
アイドル二匹を気に入っていただけて幸いです
あとイワークはアレです、今はやりのツンデレです
さて、次こそジムですね!
ほんとまじでどうしよう
08/20 21:51
[19]颯人@ついった◆6RQCIAKXwE
更新できるうちに(ネタの神様が降臨なさっている間に)更新しときたいと思います
さて、いよいよジムだ!がんばりまっす!
――――――
どうにかこうにかジムのギミックとトレーナーを突破したハルトは、やや緊張した面持ちでバトルフィールドに立った。
リーダー戦だけでなく、このジムのバトルフィールドは、コンクリートでできたトレーナーズスクールのものとは違い、むき出しの土で出来ている。
その所為で、所々に凹凸があったり、岩が転がっていたりと、かなり足場の良くないフィールドになっていた。
「チャレンジャー、前へ!」
審判の声に一瞬びくりと身体を震わせ、恐る恐るトレーナーサークルに立つ。
フィールドを挟んで向かい側には、いかにも『工事現場のお兄ちゃん』然とした青年――クロガネジムジムリーダー、ヒョウタが立っている。
緊張しきりのハルトを見て、ヒョウタはくすりと微笑んだ。
「そんな緊張しなくても良いよ」
「はっ、はい!」
もしも漫画であったなら、フキダシは四角く角張っていたに違いない。
いよいよ本格的に声を上げて笑い出しそうになったヒョウタと、ガチガチに緊張しているハルトとを見遣って、審判はルール説明を始める。
「ルールはシングルバトル、使用ポケモンは3体まで。交代はチャレンジャーのみ自由、ジムリーダーは相手を倒した時のみ可とします。道具の使用は認められていません。相手の手持ち全てを戦闘不能にした方の勝利とします」
異論、異存共に無いことを確認し、ハルトとヒョウタは互いに一歩踏み出した。
「ジムリーダー・ヒョウタ、誠意を持ってお相手するよ」
「ふ、フタバタウンのハルト、精一杯がんばります!」
名乗りを上げ終わると同時、2つのボールが宙高く投げられる。
ボールから紅い閃光と共に現れたのは、巨大な岩蛇と小さな石つぶてだった。
「イシツブテ!」
「マロン!」
ハルトの手持ちに仲間入りしたばかりのイワーク、マロンは、ゆっくりと首をもたげて思い切りイシツブテを睨む。
負けじと睨み返すイシツブテに、ヒョウタの指示が飛んだ。
「こちらから仕掛けさせてもらうよ。………イシツブテ、“マグニチュード”!」
“マグニチュード”とは、攻撃一回毎に威力の変わる不安定な技だ。
故に、大ダメージを相手に与えることもあれば、全くダメージを与えられないこともある。
まずは小手調べ、そしてこれでイワークを沈められれば最上という今のヒョウタの一手としては、これ以上無いほど的確だった。
その石の体にエネルギーを貯めたイシツブテが、フィールドに思い切り体をぶつける。
凄まじい振動が、トレーナーサークルに立つ2人のトレーナーまで揺さぶった。
どうやら、かなり高威力が出たようだ。
「これで終わっちゃう……かな?」
「そんなことないです!……マロン!」
ハルトの声に、その大きな体を縮めて衝撃をやり過ごしていたマロンが再び戦闘体勢を整える。
長い長い体のその後ろ半分が、じわじわと鈍い光を放ち出した。
「何をするつもりか分からないけど……イシツブテ、もう一度“マグニチュード”!」
「させないです!マロン、“いわくだき”!」
地面に体当たりしようとしたイシツブテを、光を放つマロンの尻尾が吹っ飛ばした。
壁に叩きつけられたイシツブテはへろへろと壁をずり落ち、地面に倒れて動かなくなる。
審判がさっと手を上げ、「イシツブテ、戦闘不能!イワークの勝ち!」と判定を叫んだ。
「お疲れ様、イシツブテ。……それじゃあ、次のポケモンだ」
ぽん、とヒョウタが投げたボールから現れたのはマロンとそっくりなポケモン。
既に“マグニチュード”でかなりダメージを負ったマロンには少し重たい相手だと判断したハルトは、ねぎらいの言葉と共にマロンをボールに戻した。
イワークは岩・地面タイプの複合である。
そして電気タイプの唯一の弱点は地面タイプ。
となると、選択肢はおのずと決まってくる。
「がんばれ、リンドウ!」
――――――
長くなるのでここでいったん切りまーす
08/23 23:06
[20]颯人@ついった◆6RQCIAKXwE
クロガネジム編後編でーす
――――――
タイプ相性的には、水タイプであるポッチャマのリンドウが断然有利だ。
けれど相手はジムリーダー。
油断はできない。
「リンドウ、“あわ”!」
ハルトの声に、リンドウは口から水でできた泡を飛ばす。
それがイワークのまわりにまとわりつき、イワークはうっとうしそうに体をよじって泡を壊した。
「イワーク、“しめつける”」
「リンドウ、よけて!」
巨体に似合わぬスピードで襲いかかってきた尻尾を、紙一重で避ける。
技が空振りしてイワークがよろけたところへリンドウがもう一度“あわ”を叩きつけるが、やはりさしてダメージを与えられてはいないようだ。
「イワーク、“たたきつける”!」
「リンドウ!」
うなりを上げて振り下ろされた尻尾をかわしたリンドウだったが、勢いはそのままで尻尾がフィールドに叩きつけられたことによりフィールド全体が揺れ、思わず転んでしまう。
その隙を逃さず、イワークは今度こそリンドウにその長い尻尾を巻きつけた。
「そのまま“しめつける”!」
「“バブルこうせん”!」
ぎりぎりと締め上げられているリンドウは、かぱっと口を開くと、“あわ”よりも高密度で早い泡をイワークの岩の継ぎ目めがけて吐き出した。
弱点の場所に弱点のタイプの技を受け、リンドウを“しめつける”強さが弱まる。
じたばたと暴れてようやくそこから逃れたリンドウは、イワークから大きく距離を取ると、もう一度同じ場所に“バブルこうせん”を放った。
それと同時に、イワークが思い切り尻尾を振り上げ、“たたきつける”を繰り出す。
「リンドウ!」
「イワーク!」
一瞬の間。
ぐらりと傾いだのはリンドウ。
ゆっくりと横倒しに倒れたのはイワークだった。
「イワーク、戦闘不能!ポッチャマの勝ち!」
反対側のトレーナーサークルで、ヒョウタが笑う気配がする。
イワークをボールに戻したヒョウタは、至極楽しそうに3つめの――最後のボールを手に取った。
「さあ、気負っていくよ――ズガイドス!」
「あ………」
先日、博物館でみたポケモン。
ズガイドスは、博物館の復元予想図と全く同じ姿いっぱいに闘志をみなぎらせている。
「リンドウ、まだいける?」
返されたのは威勢の良い鳴き声。
まだまだいけるという意思表示なのか、シャドーボクシングまで見せてくれる。
「リンドウ、“バブルこうせん”!」
「ズガイドス、“ずつき”!」
―――――
後編とかうそつきました
長くなったのでもっかい切ります!ごめんなさい!
次こそ終わります!
08/29 10:37
[21]颯人@ついった◆6RQCIAKXwE
今度こそクロガネジム編最後です!
――――――
リンドウが吐き出した泡の塊を華麗に避けたズガイドスが、その頭をリンドウに思い切りぶつけた。
弾き飛ばされたリンドウはごろごろとフィールドを転がり、壁に当たって止まる。
よろよろと立ち上がったリンドウを、もう一度ズガイドスの“ずつき”が襲った。
「リンドウ!」
「ポッチャマ、戦闘不能!ズガイドスの勝ち!」
きゅう、と目を回してしまったリンドウに駆け寄ろうとしたハルトだったが、トレーナーがバトルフィールドに入ることは許されない。
反則を取られて失格になってしまう。
すんでのところでそれを思い出したハルトは、泣きそうになりながらリンドウをボールに戻した。
「………アオイ!」
ボールから飛び出したコリンクのアオイは、平時とあまり変わらぬテンションでフィールドに降り立った。
いつもと同じであるように見えるが、小さな身体の周りで不規則に瞬く火花が、彼女がマイペースなりに闘志を燃やしていると示している。
「“とっしん”!」
「“フラッシュ”!」
アオイが放った光が部屋全体を覆う。
“とっしん”してきたズガイドスは目を眩ませ、全く見当違いの方向―――壁へと強烈なタックルを食らわせた。
硬い壁にぶつかり、渾身の力で放った“とっしん”のエネルギーが丸々跳ね返ってくる。
「怯むな、ズガイドス!“ずつき”!」
「アオイ、“スパーク”!」
体勢を立て直したズガイドスが、その硬い頭で真っ直ぐにリンドウに突っ込んでくる。
対するリンドウは、全身に青白い火花をまといズガイドスに体当たりを仕掛けた。
大きな音がして、アオイが天井近くまで弾き飛ばされる。
「アオイ!」
ハルトの悲鳴が聞こえるなか、アオイはニャルマーのような身軽さでくるくると空中でバランスを取り、すとんと綺麗に着地した。
それほど深刻なダメージを受けているようには見えない。
アオイは再び火花を散らしながら、ズガイドスを威嚇した。
「そうか……君のコリンクは、自分から弾かれたんだね」
力比べではかなわないと気付いたアオイは、咄嗟に自分から後ろへ飛んだのだ。
派手に弾き飛ばされた様に見えたが、その実ダメージはほとんど無い。
「もう一回だ!ズガイドス、“とっしん”!」
「“スパーク”!」
今度はアオイも引かなかった。
激しい激突。
壁にタックルしてしまったのが効いているのか、少しずつ、けれど確実にズガイドスの方が押されている。
アオイが突然、ズガイドスから一歩離れた。
支えが失われ、よろけたズガイドスに渾身の“スパーク”を叩きつける。
ごろごろとフィールドを2、3回転がり、ズガイドスはそれきり動かなくなった。
「ズガイドス、戦闘不能!コリンクの勝ち!よって、勝者は挑戦者、ハルト!」
審判が挑戦者側のフラッグを上げる。
はぇ?と少々間の抜けた声を上げたハルトは、歓声を上げて飛び付いてきたアオイとヒョウタの拍手でようやく事の流れ―――自分がジムリーダーに勝ったことを理解した。
******
「次のジムはハクタイシティのだね。ここからなら…コトブキに戻って、ソノオ経由で行くと良いよ」
そう教えてくれたヒョウタの言葉通りにまたクロガネゲートを抜けながら、ハルトは腰のポーチに視線を落とした。
その中のバッジケースには、手に入れたばかりのバッジが一つ、入っている。
にっこりと言うよりはにんまりと表現したほうがふさわしい笑みを浮かべるハルトの足取りは、まるでチルットの羽の様に軽かった。
――――――
ジム編ようやく終了!
戦闘描写の下手さが露呈していますがまあそれはそれで
クロガネジムのバッジの名前忘れたとかいやそんなまさか
次はのんびりソノオ観光でもしましょうかねー
09/03 00:26
[22]颯人@ついった◆6RQCIAKXwE
ソノオ編でーす^^
――――――
『花の町・ソノオタウンへようこそ!』
ミツハニーやチェリンボの描かれた看板が、町の入り口に立っている。
町に入ってすぐのところで立ち止まったハルトは、大きく息を吸い込んだ。
「わぁっ、良い匂い………!」
町の半分以上が花畑であるソノオタウンでは、季節の花の香りが風に満ちている。
その芳香を胸一杯に吸い込んだハルトは、ほぅ、と感嘆のため息をついた。
この町にはジムは無い。
けれど、ジムのある隣の街―――ハクタイシティへ行くためには、ハクタイの森を通らなければならない。
そしてハクタイの森は、他のどの地方の森よりも、道を見失って出てこられなくなる人間の数が多かった。
なので、旅のトレーナーの間では、ソノオでたっぷりと休養を取り、しっかりと準備を整えるのが当然とされているし、ポケモン協会もそれを推奨している。
夜の森に入るのは、よほどの馬鹿か腕に自信のあるものだけである。
もうそろそろ、日も落ちてくる頃だ。
ハルトも数多のトレーナーと同じように、ポケモンセンターでゆっくりと休み、出発を明日に見送ることにした。
******
ポケモンセンターにて。
『ソノオタウンかー。花って食べられんのかな?』
『食べれないこた無ェと思うがな。気になんなら食ってみりゃ良いじゃねェか』
『間違ってスボミーにちょっかいかけないようにねー』
『すんごく気を付ける』
『クク、賢明な判断だぜ』
『美味しかったら教えてねー。あたしも食べるからー』
『え、なに僕に毒味しろってこと?』
『よく分かってんじゃねェか』
『リンドウくん、期待してるよー』
――――――
特筆すべきことがないと必然的に短くなりますね
あと観光とか特にしてなかったけどキニシナイヨー
次はのんびりハクタイの森に向かいたいと思いまーす^^
09/05 07:47
[23]颯人@ついった◆6RQCIAKXwE
さくさく進めたいと思いまーす
――――――
「あー、ちょいとお嬢ちゃん。トレーナーカード見してもらえませんかィ」
「あっハイ!」
ソノオタウンをでてすぐ、205番道路に向かう橋の前で、ハルトは茶髪を長く伸ばした女性に話しかけられた。
大人しく従ったハルトからカードを受け取り、パソコンを使ってなにやら調べている。
程無くして、カードは無事に返された。
「すいやせんねィ、手間取らせちまって。この頃またギンガ団があっちこっちで目撃されてやして、お偉いさんがぴりぴりしてやしてねィ」
「ギンガ団?」
「まぁ、緑色のおかっぱ頭で全身タイツ着てついでに目元を覆う銀色の仮面してる奴にゃ近付くな、ってことでさァ」
「あっ、それなら分かりやすい!」
あまり耳慣れない口調で説明してくれる女性の胸元には、「ハヤト」と書かれたプレートが付けられている。
その女性、ハヤトは、少し申し訳無さそうにハルトを見た。
「で、今ハクタイの森でギンガ団に襲われるっつう事件が増えてやして………四人一組(フォーマンセル)で森を抜けてもらってンでさァ」
「4人で、ってことですか?」
「そーいうこと。…けど嬢ちゃん、一人だろ?」
「う、うん……」
そのまま少し考えこんだハヤトは、突然くるっと振り向き、後ろで同じようなことをしている黒髪の女性に声をかけた。
「なァクロカ、さっきそっちに三人組のおにーさん方いたろ」
「いたけど…それが?」
「こっちにお一人さんの女の子いるから、その四人で行ってもらったらどうですかねィ」
「あら、名案ね。…というか、それしか無いというか」
そうしてハルトは、『シンオウ警察』と書かれたテントに通された。
中には、こげ茶色の髪の少年と、金髪の青年と、黒髪の男性が既に座っていた。
一緒にテントに入ってきたハヤトが、先客の三人に事情を説明する。
「と、いうわけで。……良いですかねィ?」
「おれたちは構わないです」
「良かった。……それじゃ皆さん、気を付けて下せェや」
にこりと微笑んでハヤトがテントから退出する。
取り敢えずハルトは三人に向かって深々とお辞儀した。
「え、っと、ハルトともうします!よろしくお願いします!」
「小狼(シャオラン)といいます。よろしくお願いします」
「オレー、ファイっていうんだー。よろしくねー」
「………黒鋼(くろがね)だ」
小狼と名乗った少年はハルトより少し年上だろうか、意思の強そうな琥珀色の瞳を持っている。
ファイと名乗った青年は蒼色の優しそうなたれ目で微笑んでおり、黒鋼と名乗った男性は紅色の鋭い瞳をしていた。
「じゃあ、そろそろ行こっかー」
「そうですね。日が暮れる前には森に着きたいですし」
「ハルトちゃん、だよねー。もう行けるー?」
「はい!大丈夫です!」
――――――
小狼、ファイ、黒鋼
について
この三人は、「ツバサ」(作・CLAMP)という漫画のキャラクターです
全28巻完結です
少年マガジンコミックスから出てますので、気になった方いらっしゃいましたら本屋さんとかで探してみてくださいませね
コラボ小説やったったー……
彼らが好きすぎて。これも愛ゆえですよ
さて、そろそろ役者も揃ってきまして
物語も少しずつ動き出して……くれると良いんですけど………
09/07 07:47
[24]颯人@ついった◆6RQCIAKXwE
ハクタイの森突入です
――――――
鬱蒼と樹が繁るハクタイの森。
その手前にある民宿で一泊とり、一行は朝の陽射しすら遮る森へと足を踏み入れた。
「ほえー……樹がいっぱい……」
「流石に壮観だねぇ」
「おい、地図見ろ。迷うぞ」
「はいはーい」
危険な森に足を踏み入れたと言うのに緊張感に乏しいファイとハルトを、黒鋼がため息混じりにたしなめる。
それにごく軽い返事をしたファイは、鞄から地図を取り出した。
紙がこすれるがさがさという音が、静かな森に予想以上に響く。
「えーっと、取り敢えずこのままー。で、このちょっと先が、ギンガ団による襲撃被害のあった場所ー」
「気を付けないといけませんね」
ハヤトちゃんが印付けといてくれたんだー、と笑って、ファイは地図をしまう。
腰のボールに触りながら、小狼が呟いた。
進んだ先、ギンガ団襲撃事件があったという場所は、先程までよりも樹が増え、視界も悪くなっていた。
黒鋼が眉間のしわを少し深くし、さりげなくハルトの後ろに立つ。
不思議に思ったハルトがそれを問おうとしたとき、何かが突然道に飛び出してきた。
「わっ、な、なに!?」
「お出まし、かなぁ?」
へらりと笑って、ファイがうそぶく。
飛び出してきたのは、緑のおかっぱ頭に全身タイツを着た二人組だった。
光が少ないため分かりにくいが、銀色の仮面をつけている。
「うわぁ、ほんとに……なんと言うか、フシギファッション?」
「最先端と言え!」
「どっちも大差無いと思うんですが」
「ええいうるさい!早くワレワレにポケモンを寄越すのだ!」
ファイにおちょくられ小狼に冷静に指摘され、激昂したギンガ団二人はボールからズバットとニャルマーを出した。
慌ててポケモンを出そうとしたハルトを押さえ、黒鋼とファイが一歩前に出る。
「やってること前と変わらねえじゃねえか。どこが『新生』なんだか」
「うるさい!ワレワレは想像主【マスター】の命に従うのみ!」
「すぐ怒ったー。カルシウム足りないんじゃない?黒たんみたいに、さ」
「一言余計だ、馬鹿」
軽口を叩きあいながら高く投擲されたファイのボールからはミロカロスが、黒鋼のボールからはゲンガーが飛び出した。
「ジャック、頑張ろっかー」
「…いくぞ、炯(ケイ)」
加勢するべきかおろおろしているハルトの肩をそっと叩き、小狼は微笑む。
「ここは任せましょう」
「でっ、でも……」
「大丈夫、彼らは強いですから」
ギンガ団が可哀想なくらい、ね。
そう言って笑った小狼の語尾を吹き飛ばすように、爆発音が響いた。
見れば、無傷で立っているゲンガーとミロカロスの向こう側に、ぷすぷすと煙を上げて転がるズバットとニャルマー。
おぼえてろぉ、となんとも古典的かつ情けない捨て台詞を残してほうほうの体で逃げていったギンガ団の後ろ姿を、黒鋼は鋭く睨み付けた。
「けっ、何が想像主【マスター】だ」
「まぁまぁおとーさん、娘も無事だったことだし落ち着いてー」
「だからその『おとーさん』ってのヤメろ!」
へらりと笑うファイに殴りかかる黒鋼。
ハルトは、驚いて呟いた。
「………『娘』?」
「そうだよー」
ファイが、黒鋼をからかう時のとは違う、穏やかな微笑みをハルトに向ける。
小狼も笑顔だったし、黒鋼も(普段よりは)穏やかな顔をしていたので、ハルトも顔中に笑みを浮かべた。
――――――
黒鋼さんとファイさんの手持ちの技を何一つ考えてなかった
ギンガ団が暗躍しだしましたね。と言ってもまだ噛ませ役なんですけど
ハクタイを抜ける前にもう一悶着ある予定ですー
09/09 07:59
[25]颯人@ついった◆6RQCIAKXwE
色々あって気持ち悪いくらいテンション高めな私です
ソンナコトキニシナイヨ
ハクタイの森なうですー
――――――
地図があったとしても、自分一人だったらきっと迷っていたに違いない。
薄暗い森を進みながら、ハルトはそう思った。
「あの、皆さんは、なんでハクタイシティに行きたいの?」
「お使いを頼まれたんです」
「おつかい?」
「そうなんだー。お届けものがあるんだよー」
にこりと笑ってファイは、黒鋼が肩から提げている鞄を指差す。
何が入っているかまでは分からないが、重そうなものだというのはなんとなく分かった。
『落とし物に注意!』と森の入り口に看板が立ててあったが、確かにかなり色々なものが落ちている。
傷薬、毒消し、果てはモンスターボールまでが草むらの中や木々の間に落ちていて、一行はそれらをせっせと広いながら進んでいた。
「い……良いのかな……」
「ダメなんじゃーないかなー」
「でも、落としといても勿体無いですよ」
また新たに落ちていた(しかも新品の)傷薬をバックパックにしまいながら小狼が言う。
流石に森に潜っているトレーナーはいないのか、行けども行けども人に出会わない。
ギンガ団の襲撃もあれ一度だけで、それきり誰とも行き違わずに四人は進んでいた。
「あっ……」
「ハルトちゃん、どうしたのー?」
「あれ………!」
生い茂った草むらの、木の根本に近い部分が不自然に倒れている。
覗き込んでみると、そこには黒い塊が落ちていた。
時折ふるりと身体を震わせ、弱々しく鳴いている。
「………ポケモン、か?」
「まだ生きてます!」
叫ぶが早いか、ハルトはそのポケモン(仮)を抱き上げるとポーチから傷薬をだしてそれにかけ始めた。
傷に滲みるのか、しゅこしゅこと液を吹き付けられる度にか細く鳴き声が上がる。
それを無視してしばらく治療を続けると、そのポケモンはずいぶん元気になったようだった。
ハルトの腕から飛び降り、羽を2、3度羽ばたかせてかあかあと鳴く。
小狼が少し驚いたような顔をした。
「なんでヤミカラスがこんなところに?」
「なんで、って、どういうこと?」
「ヤミカラスは、ズイタウンの辺りが生息地なんです」
言われてハルトは、シンオウ地図を頭に思い浮かべる。
ズイタウンは、ハクタイの森よりもずっと東の方にある小さな町だ。
そこを生息地とするポケモンがこんなところにいるのは、確かに不思議で、かつ不自然なことだった。
「迷い込んじゃった、とかー?」
「それか捨てられたか、だな」
「……2つとも違うみたいです。ほら、これ」
小狼が、ハルトとじゃれ合っているヤミカラスの足を指差す。
そこには銀色のカフスのようなものがついていて、『G』をモチーフにしたロゴがプリントされていた。
「………ギンガ団か!」
「逃げてきたんだねぇ」
ハクタイシティには、ギンガ団が所有しているビルがある。
彼らは人のポケモンを奪うだけでなく、野生のポケモンの乱獲もしているらしい。
このヤミカラスも、乱獲の憂き目にあったのだろうと思われた。
「…小狼くん、ファイさん、黒鋼さん」
「はい」
「なぁにー?」
「…なんだ」
「……わたし、この子の“おや”になりたいの」
腕の中にヤミカラスを抱き締め、ハルトはきっぱりと告げた。
――――――
ここで引きまーす
長めになったけど気にしない!
次でようやく森を抜けられると思います
09/12 15:47
[26]颯人@ついった◆6RQCIAKXwE
身体中が筋肉痛でべきべきです
さておき、
ちょろっと小話。
本編にうまく組み込めるかは分かんないんすけども
――――――
『………で?どうでしたの』
「んー…まぁ、ビンゴ」
『当たって欲しくないビンゴだよちくしょう』
ポケモンセンターの仮眠室。
下手なホテルよりも居心地良く整えられた個室で、『彼女』はライブキャスターの多人数通信機能を使っていた。
開かれたウィンドウは三つ。
そのうちの一つに映る、妖艶な黒髪の女性が煙管の煙を吐き出しながら口を開いた。
『そう。…なら早急に手を打たないとね』
「ええ、本当に………」
『また《あの時》みたいな事になったら厄介だしな』
『もうさせませんわ、あんなこと』
残る二つの窓からも賛同の声が上がる。
『彼女』は真っ直ぐ目を開いて、煙管を加えた女性が映るウィンドウを見た。
「………お願いがあります」
『…なに?』
「貴女の持っている、《神話に関わる資料》をすべて貸していただきたいんです」
『……良いわ。その願い、叶えましょう』
「…対価は」
『貴女が今調べている事柄のデータ。すべて完成したら、それをあたしに寄越しなさい』
「………はい」
『…まだ、その街にいるのよね?』
「ええ、しばらく滞在する予定です」
『ならそこに届けるわ。少し待っていてちょうだい』
――――――
回収しきれるかなあ…………
09/13 23:55
[27]颯人@ついった◆6RQCIAKXwE
ようやく森を抜けます
――――――
長かった森を、ようやく抜けようとしていた。
何となくうっすら道のようなものが見え始め、『この先ハクタイシティ』と矢印と共に書かれた看板が目立つようになる。
そんな出口に程近いところで、ファイがある話を持ち出した。
「そう言えばねー、この辺に、《森の洋館》ってところがあるんだって」
「《森の洋館》?」
「そうそう。ここ何十年も使われてないおっきい屋敷らしいんだけど……」
「だけど?」
「……『出る』んだって。幽霊」
「………それは、ゴースとか、そういう感じのポケモン、」
「じゃあ、無いらしいよー」
ぷるぷると若干震えながら、それでも気になるらしく聞くのをやめようとはしないハルト。
その後もしばらく、ファイがもっともらしく森の洋館にまつわる怪談話を語る声が静かな森に聞こえていた。
******
「ぬけたー!」
久し振りの日光がさんさんと降り注ぐ。
森を抜けてすぐのところにあった検問もパスし、四人はようやくハクタイシティにたどり着いた。
「とりあえず、ポケセンいこっか。その子の治療、してあげなきゃねー」
「そうですね。簡易的なことしかしてないですし」
「はい!……でも、みんなは?」
「…俺達もセンターに用があるからな」
「そこまでは一緒ー」
ハルトはそっと、腰に新しく増えた四つ目のボールに触った。
その中では、森で出会ったヤミカラスのクロユリが穏やかな寝息をたてている。
ポケモンセンターの回復カウンターに手持ちを預け、四人はその奥にある食堂へ足を運んだ。
トレーナーカードを見せれば無料でサービスが受けられるようになっている。
カウンターのお姉さんにコーヒーや紅茶の入ったカップをトレーにのせてもらったところで、良く通る声が食堂に響いた。
「おーい、四人とも、こっちこっち」
窓際のソファ席に座る人物が、手招きをしながら呼んでいる。
四人とも、と呼ばれたので、取り敢えずハルトもとことことついていった。
優雅に足を組んで座るパンツスーツの女性の目の前に、黒鋼がどさりと肩から提げていた鞄を置く。
女性は笑顔でそれを受け取った。
「悪いね、わざわざ。しかも森越えまで頼んで」
「いえ、大丈夫でした」
「でも、高くついたでしょうー?」
「あの魔女だ。当たり前だろうが」
どうやら彼等は知り合いらしい。
お使い、というのもこの事のようだった。
そこで女性がハルトの方を向く。
ほんの少しだけ蒼が溶けたその瞳に、ハルトは見覚えがあった。
「あ!博物館の……!」
「あれー?知り合いだったの?」
「こないだクロガネ博物館で知り合ったんだ。名乗り忘れたけど」
「意味無ぇじゃねぇか」
呆れたような黒鋼の呟きをスルーして、女性はハルトに微笑みかける。
「さて、改めて。……私はツキクサ。前も言ったと思うけど、神話や昔話の研究をしているんだ」
「は、ハルトともうします!」
ハルトは慌てて立ち上がると思い切り頭を下げた。
あ、と小狼たちが止める間もなく、ゴン、と言うなんとも痛そうな音がハルトの額と机から聞こえてきた。
――――――
さてさて
取り敢えずポケセンに来たので探索は次回以降になります
どんどんキャラが増えてきて動かしにくくなっt((
09/16 23:50