この記事には書き込めません
[1]T.T.
【ポケダン 浪漫の探検隊】
どうも、T.T.です。ガーディ巡査の方は話が行き詰まってしまったので、新しくポケダンの小説を書きたいと思います。拙い文章ですが、よろしくお願いしますm(--)m
では早速↓
『ロマン(ハリマロン)』♂
本作の主人公で、ニンゲンの男の子だった。絵本に出てくる架空の生き物であるポケモンに憧れており、いつか向こうの世界で自由な冒険をしたいと思っていた。ある朝、目が覚めると、ポケモンだけが暮らす絵本のような世界にいることに気付き、自身もまたポケモン・ハリマロンの姿となっていた。頼りない一面もあるが、いざとなったら強気になる、純粋で優しい性格である。一人称は「僕」
『ケロマツ』♂
本作のパートナーで、ロマンとは同じくらいの年齢の男の子。呑気でボーッとしていることも多いが、戦いのときは驚くほどの瞬発力を見せる。読書が好きで年齢にしては豊富な知識量を持つが、いじめっ子から「ガリ勉」とからかわれることもしばしば。それ故、探検隊を組みたくても仲間に恵まれないのが悩み。後にロマンと探検隊『トレジャー』を結成する。一人称は「オイラ」
◎プロローグ
森閑を極めたある闇夜のこと。少年の住む家屋は幽けき光を放っていた。
少年「(ポケモンってかっこいいなぁ〜! 僕の知っている生き物が、みんなヒーローのようだ!)」
寝床で少年が目を輝かせる傍、次次と頁がめくられていく画集は、他ならぬ「絵本」である。表紙やその内側に色彩豊かに描かれた、摩訶不思議な架空の生き物たち。巷では「ポケモン」と呼ばれている。
少年「(いつか僕も、ポケモンの世界に行ってみたいなぁ…!)」
母「ロマ〜ン! 早く寝なさ〜い!」
ロマン「は〜い!」
階下の催促を小耳に挟んだ少年・ロマンはデスクの引き出しに絵本を納めるや否や、消灯し、枕した。デスクカバーに身を包んだ期末テストの範囲表への一瞥が、少年を憂わしげにさせたのだ。
ロマン「(はぁ〜…。でも実際は、いつも通りの朝がやって来る。今日と何も変わらない、いつも通りの…)」
意識が夢路に消えた。この時少年は、翌朝に絵本の世界へ導かれることなど、知る由もなかった。
08/13 21:41
[18]T.T.
第2話『結成の日』
夜ー 眼前にそびえ立つ巨大な塔。混沌なまでにその周りで繁茂し合う蔓草は、古きを物語っているかのよう。
ロマンたちは知の聖地・ゲロゲ文庫の門前に来ていた。
ロマン「うわ〜! 高〜い!」
ケロマツ「さ、ここがおいらの家だよ。この門を開けば、おいらたちの探検隊生活の第一歩がスタートする…。準備はいいかい?」
ロマン「もちろん!」
ギィ… バタン
ケロマツ「ただいま〜。あ、ガマゲロゲさん!」
ガマゲロゲ「お〜ケロマツや、おかえり。待っておったぞい」
扉の先にある世界は、書物一色。円柱状の塔の壁に隙間なく詰め込まれた500万冊の本。中に入るや否や、木の香りが立ち込めっているのがわかった。
そして塔の中央には、体よりも小さな古椅子に座りペンを走らせているポケモンが一匹…。
ロマン「ここにも、そこにも、あそこにも本が! こんなの初めて見たよ」
ガマゲロゲ「ん?? お前さんは…………ケロマツの友達かいの?」
ロマン「はい。えーと、ハリマロンのロマンです。よろしくお願いします!」
ガマゲロゲ「ほっほっほ。ケロマツの友達が家へ遊びにやって来るとはな。コホン、ワシはガマゲロゲ。図書館の館長、執筆家をやっておる」
ケロマツの5倍ほどある大きさの、壮年の蛙ポケモン。肥満気味の下っ腹に葡萄の如きコブ、そして充血した真紅の眼差しが特徴的だ。
ガマゲロゲ「まあ、今日はゆっくりしていきなさい」
ケロマツ「………あのね、ガマゲロゲさん。実はおいら…」
ガチャ
???「うふ❤︎ 実験❤︎ 実験❤︎ 楽しいわ〜❤︎ 次は何を実験しようかしら〜❤︎」
不意に厠の扉から、三角フラスコでお手玉をするポケモンがロマンたちの方へ歩み寄ってくる。
ケロマツ「ただいま、Dr.オーベム。今日は友達を連れてきたよ」
オーベム「あ〜らケロちゃん❤︎ 随分と可愛い坊やじゃない❤︎ もっとも、世界で一番可愛いのはアタシのダーリン・ガマちゃんだけどねぃっ❤︎ ね、ダーリン❤︎」
ガマゲロゲ「そ、そうじゃな…」
ロマン「あ、僕ロマンって言います。性別はどちらですか…?」
オーベム「心は♀、体は♂❤︎ 好物はダーリンのとびっきりのえ・が・お❤︎ それがこのアタシ、オーベムよ❤︎ 皆からはドクターって呼ばれているわ❤︎」
チュッ❤︎
ロマン「ひゃあ!?」
オーベム「ん〜❤︎ よろしくねぃっ❤︎」
お手玉をやめ、ロマンの右頬に厚い唇を接着させるDr.オーベム。宇宙人の如き風貌にして、質感のある頭部、点滅する3本の指が目につく。
ガマゲロゲ「そうじゃケロマツ。先刻は何か言いたげじゃったが……どうかしたのかのう?」
ケロマツ「………実は…」
ケロマツはガマゲロゲとDr.オーベムに、ロマンが元々人間の子供であったこと、さらに自分がロマンと共に探検隊を組むという旨の話を伝える。
04/03 14:58
[19]T.T.
第2話の途中ですが、ガマゲロゲとDr.オーベムのキャラ設定を挟んでおきます。作中で触れることはほとんどないと思うので。
『ガマゲロゲ』♂
蔵書数500万冊を誇る大図書館「ゲロゲ文庫」の館長兼執筆家。ケロマツの憧れの的でもある。若かりし時はDr.オーベムと共に伝説の探検家と謳われたほど。冒険の道中で、自分が見てきたものについて多くのポケモンに知ってもらうことを目的に、「ゲロゲ文庫」を創設。文武両道の精神の持ち主であり、その知識の量は計り知れない。また、偶然洞窟で見つけた孤児・ケロマツを親代わりになって養うことを決意し、その後探検隊を引退するなど、広い心の持ち主としても有名。ケロマツからは父親のように慕われている。
『Dr.オーベム』♂?
科学者にして生粋のオカマ。元々は探検家・ガマゲロゲのファンにすぎなかったが、その天才的な頭脳を買われ、入隊を果たす。「キズぐすり」や「タウリン」など、不思議のダンジョンの世界では珍しいものを発明するのが好き。探検隊引退後も発明をやめることなく、今なお「ゲロゲ文庫」では、天才Dr.オーベムの実験結果を文豪ガマゲロゲが本にまとめるという手法が取られている。また、語尾には必ず❤︎がつく。料理も得意とするため、ケロマツからは母親のように慕われている。
04/05 20:41
[20]T.T.
オーベム「ロ、ロマンちゃんが……人間…??❤︎」
ガマゲロゲ「…………生きておったのか………。人間という種族は……!!」
本来この世界ではありえない人間の存在が、知識人の心を震撼させたのは言うまでもない。
ロマン「はい。他のことは何も覚えていないのだけれども…わかるんです。『自分は人間だった』ってことは」
ケロマツ「ロマン自身が言ってるんだから間違いないよ!」
ガマゲロゲ「…Dr.や、あの本を出してくれんかの?」
オーベム「ん〜了解っ❤︎ サイコキネシス❤︎」
ワチョワチョワチョワチョ…
点滅する指先から一筋の光線を、遥か上方の本棚めがけて発射するオーベム。光線が命中した1冊の本はサイコパワーにより引きつけられ、見事ガマゲロゲの手元まで浮遊した。
ガマゲロゲ「これはこの図書館に古くから存在する、作者不詳の説話集じゃ」
ケロマツ「神話や伝説に関する内容が盛り込まれた本だね」
ガマゲロゲ「さよう。人間に関する記述もあり、ワシも解読を続けておるのじゃが、いかんせん文字が薄れていてのう…」
ロマンはその一際古びた説話集を覗き込んでみるが、そこにはアーボの踊りとも言うべき難解な文字が羅列しているだけだった。
ガマゲロゲ「ワシはこの1行をこう解釈しとる。『人間とは、高度な文明により平和な暮らしを実現する種族である』、と」
ロマン「高度な…文明??」
ガマゲロゲ「要するに、荒くれ者が多く存在する我々ポケモンの世界とは正反対ってことじゃ」
ケロマツ「ところでガマゲロゲさん、探検隊の件なんだけど…」
ガマゲロゲ「ほっほっほ。知的好奇心旺盛なお前さんなら、いずれこう言うと思っておったわい。義息子の旅立ちに反対する理由が見当たらない」
ケロマツ「ありがとうガマゲロゲさん!」
ガマゲロゲ「…ただし、ワシが気がかりなのはロマンくん、お前さんの方じゃ」
ロマン「どういうことですか……?」
徐に椅子から立ち上がり、怪訝そうな顔でロマンを見つめるガマゲロゲ。
ガマゲロゲ「先ほども言った通り、ここは様々な危険が伴うポケモンの世界。ロマンくんが暮らしておったであろう平和な人間世界とは大きく異なっておる……。そんなポケモンだけの浮世を渡り歩く覚悟は、できておるか?」
ロマン「はい! 僕、この世界をケロマツと一緒に探検して、色んなものに触れていきたいんです!」
ロマンのどこまでもまっすぐな眼差しは、自信と希望に満ちていた。
ケロマツ「ロマン…!」
オーベム「これは将来が楽しみだわ〜❤︎」
ガマゲロゲ「いい返事じゃ、ロマンくん。さ、今宵は2人の探検隊結成を祝して宴じゃ!」
04/25 15:01
[21]T.T.
ミッドナイトの地下室。ゲロゲ文庫の食堂のテーブルには、贅沢を極めた料理がDr.オーベムの手によって召喚されていた。
オーベム「はいっ❤︎ ダーリン、ケロちゃん、ロマンちゃん❤︎ 今日はご馳走よ❤︎」
ケロマツ「キノコステーキにキノコのチーズ焼き、キノコのマヨネーズ炒め、おまけにキノコスープまで…! ん〜いい匂い!」
オーベム「ケロちゃんたちが採ってきてくれた研究用のかおるキノコが余ったもんだから、今夜はキノコ料理に挑戦してみたのっ❤︎」
ロマン「ジュルリどれも美味しそう…! ドクターさんありがとう!」
ガマゲロゲ「ほっほっほ。たっぷり食べて体力をつけるんじゃぞ」
人間の時と同じように自ずと口内から分泌される液体ーよだれを抑止できないロマン。熟成されたキノコ料理は、風味だけでポケモンたちの胃を満たすかのよう。
ガマゲロゲ「コホン。改めて今日は、ケロマツに友達ができたこと…」
オーベム「そして2人の探検隊結成を祝って…❤︎」
ロマンとケロマツはオボンジュースの入ったコップを、ガマゲロゲとDr.オーベムはカシスオボンの入ったグラスを持ち上げる。
全員「かんぱ〜い!!!」
ロマン・ケロマツ「いただきまーす♪」
ガマゲロゲ「おめでとう! ケロマツ、ロマンくん!」
ガツガツムシャムシャガツガツムシャ…
とろけるような旨味が、口の中にぶわっと広がる。かおるキノコ本来の持つ風味と洗練された味付けは絶妙なハーモニーを奏でていた。
ロマン「うわ〜おいしい! こんな料理、食べたことがないよ!」
ケロマツ「Dr.オーベムの料理の腕前はプロ級だからね」
ガマゲロゲ「そうじゃモグモグ。探検隊のチーム名は何にするか…決まったかの?」
ケロマツ「おいらが前々から考えていた案ならあるよ。えーとね……」
ガツガツムシャムシャガツガツムシャ…
料理を頬張る手は止まらない。
ロマン「………『トレジャー』??」
ケロマツ「そう。財宝を意味する言葉でね、浪漫が溢れていると思うんだ。どうかな?」
ロマン「チーム・トレジャー……!
うん、良いと思うよ!」
ケロマツ「ありがとうロマン! いつかロマンの持つ『絵本』の表紙に描かれてた財宝も探し…あ!!」
ガマゲロゲ「ん? どうかしたかの??」
ケロマツ「『絵本』だよ『絵本』!
ロマン、ちょっとそれ貸して」
唐突に、ロマンが倒れていたときから携えている『絵本』の存在に気づくケロマツ。ケロマツはガマゲロゲに、『絵本』は最初真っ白で何も描かれていなかったこと、そして後から自動的に『絵本』の表紙が描かれたことを伝える。
ガマゲロゲ「自動的に描かれる不思議な『絵本』…? すまんが、ワシにはちとわからぬ…」
ケロマツ「そっかー………」
ロマン「まあまあケロマツ。早く食べないとせっかくのご馳走が冷めちゃうよ?」
オーベム「宴は楽しまなきゃ損よ〜❤︎」
ケロマツ「んー……それもそうだね」
ガツガツムシャムシャガツガツムシャ…
楽しい時間はあっという間に過ぎ去った。
朝ーゲロゲ文庫の門前には、ガマゲロゲとDr.オーベムに見送られるロマン・ケロマツの姿があった。旅立ちには絶好の陽気だ。
オーベム「ケロちゃん、ロマンちゃん❤︎ 一旦ここでお別れね❤︎」
ケロマツ「2人には本当にお世話になったよ。感謝してもしきれないほど………」
ケロマツはそっと目を瞑る。するとそこには、初めてガマゲロゲたちと出会った時から昨晩の宴までの記憶が鮮明に写っていた。
ケロマツ「じゃあ改めて…行ってきます!」
ガマゲロゲ「グスン…。たまには戻って来るんじゃぞー!」
オーベム「泣いたダーリンもキャワワ❤︎ うふ❤︎ いってらっしゃ〜い❤︎」
ロマン「さようならー! 元気でねー!」
ドキドキとワクワクに胸膨らませ、チーム・トレジャーは探検隊としての第一歩を踏み出すのであった。
第2話『結成の日』ー完ー
04/26 21:30
[22]T.T.
第3話『サバイバルタウンへ』その1
陽光うららかな朝。道端に人知れず芽吹く草花は水滴を纏い、ガラスの如く煌めく。
ロマンとケロマツはゲロゲ文庫を後にしたあと、ダンジョン・青緑の小道を南に進んでいた。
ロマン「わわっ! ケロマツ、『絵本』が…!」
ケロマツ「あっ、新しいページが描かれている!」
道中、ロマンの持つ『絵本』の1ページ目が更新されたのに気付く。
そこには昨晩の宴で馬鹿騒ぎをするロマン・ケロマツ・ガマゲロゲ・Dr.オーベムの姿があった。
ロマン「いつの間に……。全然わからなかったよ」
ケロマツ「昨日の夕方に『絵本』の表紙が描かれた時は、『絵本』は眩しい光を放っていた…。今までそれに気づかなかったってことは、昨日おいらたちが眠っている間に更新された可能性が高いね」
ロマン「本当に、不思議な『絵本』………」
顔をしかめ、『絵本』を上下に揺り動かしてみるロマン。
ケロマツ「その本が何を意味しているか、わかる日が来るといい
ね」
ロマン「うん。ところで僕たちは今、どこへ向かっているの?」
ケロマツ「『サバイバルタウン』。探検隊の町さ」
ロマン「探検隊の、町……??」
サバイバルタウンとは、ゲロゲ文庫のすぐ南に位置する大規模集落である。アイテムショップや倉庫、銀行、宿屋といった様々な施設が存在するため、多くの探検隊が集う拠点となっている。
ケロマツ「おいらも噂でしか聞いたことないけど、とっても賑やかな所らしいんだ!」
ロマン「へぇ〜、楽しみ〜!」
ケロマツ「ゲロゲ文庫とは目と鼻の先にあるから、もうじき着くと思うよ」
ロマン「あっ、看板だ!」
前方の看板が東の方角に、「この先サバイバルタウン」と示しているのを見る。東の林を抜ければ集落は目の前だ。
ロマン「よし、早速行ってみよう…」
???1「お前たち! そこで何をしている!!」
???2「泥棒はお帰り願うアルよ〜!!」
ロマン・ケロマツ「!?」
スタタン!
西にある赤土の崖の上から2匹のポケモンの声が聞こえてくるや否や、そのポケモンたちは宙へ舞い、ロマンたちの目の前に華麗に着地する。
ロマン「ど…泥棒だなんてとんでもない!」
ケロマツ「おいらたちは探検隊としてサバイバルタウンにやって来ただけさ!」
???1「おっと、それは失敬」
???2「最近町には怪しいポケモンの出入りが多くててっきり……。すまないアル」
動揺するロマンたちに丁重に頭を下げる謎のポケモンたち。
???1「俺は探検隊『タンホワタン』のリーダー、コジョフーだ。隣にいるデカいのはマルノーム。…お前たちは?」
ケロマツ「おいら、探検隊『トレジャー』のケロマツ。本物の探検隊に会えるなんて感激だよ」
マルノーム「いや〜そんな〜。よろしくアル♪」
嬉しさのあまり、髭でケロマツにボディータッチをするマルノーム。
ロマン「僕はハリマロンのロマン。新米だけどよろしくね」
コジョフー「ほう。ポケモンなのに名前があるとは珍しいな」
ロマン「僕、元はポケモンじゃなくて、人間だったんだ」
マルノーム「アルル!??」
コジョフー「………!!!」
唐突にロマンの胸ぐらを掴むコジョフー。冷静だったタンホワタンのリーダーの表情は一変して、焦燥を含むものになった。
ケロマツ「ちょっと! 何をするのさ!?」
コジョフー「静かにしろ! 町の輩が聞きつけたらどうするつもりだ!」
ロマン「〜〜〜〜〜!!!」
コジョフー「よく聞け。サバイバルタウンのポケモンは何故か皆、『人間』の存在をひどく嫌っている…!」
ケロマツ「え!?」
コジョフー「人間だということを公にすればお前、殺されるかもしれないんだ!!」
05/05 11:42
[23]T.T.
悪役の設定に行き詰まった結果、放置したみたいになってしまいました。
更新します。今回は説明的な所が多いですが、ご了承いただければと思います。
第3話『サバイバルタウンへ』その2
ロマン「ハァ……ハァ……! 殺される……? 何で…!?」
コジョフーに解放されたロマンは草の上に尻もちをつく。タンホワタンのリーダーの、体格には似合わぬ強烈なパワーを身を以て感じていた。
コジョフー「サバイバルタウンの町長が言うんだ。『人間は昔、ポケモンと共に暮らしていた時代、ポケモンたちを差別していた。自ら人間を名乗る者は殺せ』ってな」
ロマン「差別だって…!? 人間が??」
コジョフー「俺にはこの町長の言うことが本当かどうか、分からない」
マルノーム「そもそも人間なんて伝説上の生き物だと思っていたアル。それが昔ポケモンと共存していたなんて…びっくりアルよ」
ケロマツ「(マルノームの言う通りだ。人間とポケモンが接点を持っていたなんて…。それも、差別か。ガマゲロゲさんの口からは出てこなかった言葉だ…)」
『人間とは、高度な文明により平和な暮らしを実現する種族である』。2匹はこの文言と、サバイバルタウンの町長の言うことに矛盾を見出していた。
コジョフー「俺も思っていたさ。まさか人間を自称する者など現れないだろう、と。だがそれがどうだ。今、俺の目の前に『人間』がいる…!」
ロマン「…!」
ケロマツ「ちょっと待って。何でコジョフーはロマンの言うことを簡単に信じちゃうのさ?」
コジョフー「『人間なんて伝説上の生き物』。探検家たる者、そんな先入観に囚われてはいけない。それだけの話だ」
マルノーム「ミーたちだって嬉しいんだアル! 本物の人間に出会えるなんて!」
ケロマツ「マルノーム…!」
唐突な『人間』の登場に驚かされたコジョフーだが、彼の表情からは微かな笑みが垣間見える。
コジョフー「受け取れ、ロマン。こうした方が探検隊のリーダーらしく見えるぞ」
ギュッ
ロマン「これは…」
ロマンの角に赤いバンダナを巻いてあげるコジョフー。
ケロマツ「探検隊のバンダナじゃないか! もらっちゃっていいの?」
マルノーム「2つ持ってるから心配いらないアルよ。ヒソヒソ(リーダーは自ら人間を名乗るユーの度胸が気に入ったんだアル)」
ロマン「ありがとう! タンホワタン!」
赤いバンダナが、『絵本』の表紙に描かれたロマンが巻いているものと同じであることは、言うまでもない。
コジョフー「よし。俺たちがお前たちをサバイバルタウンまで案内してやろう」
ケロマツ「何から何まで…。本当、至れり尽くせりだよ」
コジョフー「ただしロマン。お前が人間だということを公にしてはならない。サバイバルタウンではお前は飽くまで一匹のポケモン。…いいな?」
ロマン「うん、わかった…」
ロマンとコジョフーが指切りを交わした、そのときである。
マリル・ペロッパフ・チラーミィ「きゃ〜❤︎ いたいた、コジョフーく〜ん❤︎」
コジョフー「まずいな。また、追っ掛けか…! おい、町へ急ぐぞ!」
ケロマツ「あ、うん。(逃げる必要があるのか分からないけど)」
マルノーム「………(羨ましいアル
なぁ、リーダーは。モテモテで)」
クールなリーダー・コジョフーを先頭に東の林を駆け抜けていくロマンとケロマツ。探検隊の町はもうすぐだ。
一方、林の木の上ではー
???「ふわ〜…ぁ … 。騒がしくて眠ろうにも眠れないでござる
よ…」
大きな伸びをしながら、そのポケモンは辺りを見回してみる。
???「今しがた『人間』という単語が耳に入ったような気がしたが…拙者の聞き間違いでござるかな?」
07/30 18:43
[24]蒼葉
こんばんは!蒼葉です。
まさか人間とポケモンが一緒に
暮らしていたとは……
新たな事実に驚かされました。
謎のポケモンの正体も気になり
ます。
○感謝○
僕の書いている小説に
コメントを書いて頂き
ありがとうございます!
これからも精進して行こうと
思います!
長文失礼しました。
07/30 22:59
[25]T.T.
蒼葉さん、コメントありがとうございます!
私の小説は特に展開が遅いので、謎のポケモンの正体については気長にお待ちいただければと思います(笑)
では、更新しましょう。ちなみにコジョフーの追っ掛けの3人組は、1話のタマゲタケのような完全なモブキャラです。別な話で再登場させるつもりはありません。
第3話『サバイバルタウンへ』その3
コジョフー「ふー……。もう大丈夫だな」
ロマン「別に逃げなくてもよかったんじゃないの?」
黄色い声援の追っ手から逃れ、ロマンたちはサバイバルタウンの外れにある高台をのんびり歩いていた。北には広漠たる海が見える。
コジョフー「何というか… 俺の一番苦手なタイプだ。ああいうのは」
マルノーム「とかいって本当は嬉しいくせにアル〜?」
コジョフー「う、うるさいぞ! マルノーム!」
ロマン・ケロマツ「…(汗)」
相方を肘…もとい髭でつっつくマルノームと、赤面し子供のような金切声を上げるコジョフー。
ケロマツ「ところでさコジョフー、これからどこへ向かうつもりなんだい?」
コジョフー「サバイバルタウンの町長の家だ」
ロマン「ええっ!? 人間は殺せっていう…あの……!?」
反人間主義と思しき町長に対して、恐怖と狼狽を隠せないロマン。
コジョフー「案ずるな。町長の‘ヌメルゴン’氏は発言こそ過激だが、天真爛漫な性格と聞く」
ロマン「そ、そうなんだ…。僕、殺されないかな?」
マルノーム「ポケモンらしく振舞っていれば問題ないアルよ」
コジョフー「まあ今後サバイバルタウンに在住する以上、挨拶くらいはしておいた方が良いからな」
噂をしていると、遥か東の絶壁に一軒家らしき建物が見えてきた。波は高く、打ちつけた水しぶきが建物をほどよく湿らせているようだ。
コジョフー「おそらく向こうに見えるのが町長の家だろう」
ケロマツ「おそらくって…タンホワタンは会ったことがないのかい?」
コジョフー「ああ。サバイバルタウンを拠点にしているわけではないからな。行ったことがあるのは賑やかな広場だけだ」
マルノーム「ミーたちは基本的に旅先で野宿アル」
ロマン「え、何でわざわざ…?」
コジョフー「……………………‘あの島’を攻略するためだ」
コジョフーはその場で座禅を組み、北の大海原の彼方に見える島を指差す。
マルノーム「‘吹雪の島’。氷ポケモンも凍てつく寒さ故に、最難関ダンジョンと謳われるほどだアル」
ケロマツ「おいら、本で読んだことがある! すすんで開拓する探検家が少ないから、未知の財宝が眠ってる可能性が高いんだよね?」
マルノーム「その通り! その財宝を見つけ出すのが、ミーたちタンホワタンの目標アルよ!」
ロマン「へ〜! ちゃんとした目標があるっていいね!」
大冒険への憧憬はロマンの心を照らすかのよう。
それとは反対に、コジョフーは微動だにせず、吹雪の島に向かって祈祷していた。
コジョフー「大事なのは目標に見合った努力だ。………確かに、サバイバルタウンに住めば暖かい布団で寝られる。食糧に困ることもない。しかしそれでは、過酷な吹雪の島で生き延びることなど不可能。財宝も夢のまた夢で終わるだろう」
マルノーム「リーダー……」
コジョフー「だから俺たちは野宿という選択肢を選んだ。今の俺はまだ甘い。もっと、修行を積まないと…!!」
ケロマツ「(探検隊ってバカ騒ぎばっかりしてるイメージがあるけど……真摯なポケモンもいるんだなぁ)」
ロマン「真面目だね。コジョフーは」
一途に高見を思慕する姿に、ロマンたちは敬意すら覚える。
コジョフー「…………………話が逸れたな。すまない…」
マリル・ペロッパフ・チラーミィ「見つけた❤︎ 待ってよコジョフーく〜ん❤︎」
忘れた頃にやって来る熱狂的なファン。コジョフーは即座に立ち上がり、逃走体勢を整える。
コジョフー「…!! おいトレジャー、お前たちとは一旦お別れだ!」
ロマン「え!?」
コジョフー「本当は広場まで案内したかったが…追っ手がここまで来るとは想定外だ! また会えるといいな!」
3匹の追っ掛けをヒラリとかわし、間を縫うように走るコジョフー。
ケロマツ「人気者も大変だねぇ」
ロマン「元気でねー!!」
マルノーム「リーダー、待ってくれアル〜! ミーも女の子にきゃーきゃー言われたいアルよ〜!」
慌てるあまり、口からヘドロを撒き散らしながらヌルヌル前進するマルノーム。
マリル「きゃー!! マルノームよー!!」
ペロッパフ「不潔ー!!」
チラーミィ「最低ー!!」
ロマン・ケロマツ「別の意味できゃーきゃー言われてる…(汗)」
07/31 21:58
[26]T.T.
第3話『サバイバルタウンへ』その4
ヌメルゴン「いや〜、よく来たんだじょー! ゆっくりしていくがいいじょー!」
ケロマツ「うわっ!?」
まんまるとした怪獣と握手をし、空中で上下に揺り動かされるケロマツ。
ロマンたちはタンホワタンと別れた後、サバイバルタウンの町長・ヌメルゴンの家でおもてなしを受けていた。
ロマン「町長さん(モグモグ)。この木の実(モグモグ)、おいしいね!」
ヌメルゴン「それはモモンの実といって、ボキの大好物なんだじょー!」
ロマン「僕も好きだなあ。甘いものは(モグモグ)」
ヌメルゴン「その甘さこそがモモンの実の魅力なんだじょー!」
ロマン「うんうん! みずみずしい食感もまたいいよね」
ケロマツ「(ロマン、殺されるどころか馴染んじゃってるよ…)(汗)」
テーブルの上に大量に出されたモモンの実をかじりつつ、安堵のため息をつくケロマツ。天真爛漫な町長というのは本当のようだ。
ヌメルゴン「あ、そうそう。新しくこの町に住むキミたちに、1つお願いがあるんだじょー」
ロマン「お願い…?」
ヌメルゴン「なんでもこの近くに、あの忌々しい『人間』を名乗る者がいるらしいんだじょー」
ロマン・ケロマツ「!???」
驚愕のあまり、咀嚼していたモモンの実を喉に詰まらせそうになる。
ヌメルゴン「人間は大昔ポケモンを差別していた、最低最悪の種族だじょー。もしそんな奴を見かけたら、ボキに言ってほしいんだじょー」
ロマン「う……うん(ゴクリ)」
ヌメルゴン「人間なんて、こうしてやるじょー☆」
ギュ ゥ ゥ …
特大モモンの実を片手で軽々と握りつぶし、指についた果汁を舐め回すヌメルゴン。
ロマン「(ひぃ〜! この人、怖い)(泣)」
笑顔でモモンの実を味わう怪獣の姿は、ロマンの恐怖心をいっそう掻き立てる。
2匹はこの修羅場を切り抜けようと、不自然な笑みを取り繕って同調してみせる。
ケロマツ「あは……本当、人間とか許せないよね…」
ヌメルゴン「あり? どうしたんだじょー? 顔色が悪いじょー」
ケロマツ「い、いや気のせいだよ!」
ロマン「僕たちそろそろ帰ります!」
バタン!
ヌメルゴン「ガッポガッポ稼ぐんだじょ〜!」
頭が真っ白になって退出するトレジャー。手足には冷汗が川のように流れている。
ロマン「ハァ…ハァ…。なんで人間がいるってわかったんだろう…??」
ケロマツ「あの場にはタンホワタン以外誰もいなかったし…そう考えるとおかしいよね」
ロマン「でもよかった。バレずに済んで」
澄み渡った空を仰ぎ、徐に深呼吸をする。
ケロマツ「ま、今のことは忘れて広場まで行ってみようよ」
ロマン「その方がいいね」
ケロマツ「よし! どっちが先に到着できるか、競走だ!」
一目散に丘を駆け下りるケロマツ。
ロマン「待ってよケロマツ〜! えーっと、『絵本』はどこに置いたかな………って、痛い!」
???「!!」
ゴツン
不意にロマンは、藤色のマントで全身を覆ったポケモンに衝突する。
ロマン「あわわっ! ごめんなさい、大丈夫?」
???「貴様ッ…!!!」
ゴゴゴゴゴゴ…
マントからは菖蒲色の目が血走り、睨みを利かせている。
???「食べカスがついているぞ。だらしのない」
モモンの実の果肉がついたままの口元を、そのポケモンはマントで拭き取ってあげる。ひどく潔癖症のようだ。
ロマン「わざわざありがとう。君、名前は…?」
???「貴様に教える義理などない。………さらばだ」
重々しい口調でそう言い残し、マントのポケモンはヌメルゴンの家の中へ入るのであった。
08/02 16:47
[27]T.T.
6世代のポケダンが発売されましたね。私の小説など本家ポケダンに比べたら稚拙ですが、温かい目で見守っていただければと思います。
第4話『初仕事?』その1
ケロマツ「ロマン、遅いよ〜」
ロマン「ハァ…ハァ…。ごめん」
ここは探検隊の町・サバイバルタウンの商店街。夥しい数のポケモンが往来しており、ロマンたちの話し声がかき消されるほどだ。
ロマン「見たことのないポケモンがあんなにたくさん…! 本当に賑やかな所なんだね!」
ケロマツ「おいらもびっくりだよ。はぐれないように気をつけてね…」
ケロマツは注意喚起のため後ろを振り返ってみる。
ケロマツ「ってロマンがいない!?」
ロマン「わわっ!!?」
ポケモンたち「広場で『飲み比べ大会』やってるってよ!!」
ポケモンたち「どーせおばちゃんが無双するんじゃねーの!?」
ポケモンたち「まあ一見の価値はある。行こうぜ!!」
ロマン「ちょっと、押さないでよ〜!」
ポケモンたちの群衆の波にさらわれ、一瞬にしてケロマツとはぐれてしまったロマン。挙げ句の果てには屈強なポケモンによって突き飛ばされる始末である。
ロマン「いたたた…。ここは一体…?」
ドワァーーーーーーー!!!!!!
突如歓声が耳の穴を貫く。ロマンが行き着いた先は、飲み干された酒樽が散々ところがる広場であった。
カクレオン「新・記録ぅーーーー!! 倉庫のガルーラおばちゃん、名のある酒豪たちを100人抜きです!!」
ガルーラ「ぷはァーーー…。なんだいだらしないねえ!!!! アタシはまだ飲めるよ!!! もっと酒を持ってきなァ!!!!!」
グォォォォォーーーーン!!!!
カンガルーを模したようなポケモンが天高く咆哮する。
カクレオン「まさに最強のおばちゃん!! えー第256回『飲み比べ大会』、司会はこの私、ショップ・カクレオンがお送りしましたー!!」
カメレオンを模したようなポケモンは脱帽する。同時に、ロマン以外の観客は広場を後にし始めた。
ロマン「(あの飲み物っておいしいのかな…)(ゴクリ)」
???「あら、かわいい坊やね」
空の酒樽の後始末をするポケモンがロマンの方へ歩み寄る。
???「あなたもお酒飲んでいく?」
ロマン「えっ、いいの!?」
???「ウフフ。冗談よ。だってあなた、まだ子供だもの」
ロマン「そんな〜………ってあれ? 君は?」
???「私はクチート。そこでバーを経営しているわ」
09/27 21:10